小原愼司『地球戦争〈4〉』

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 小原愼司『地球戦争〈4〉』小学館 2014 ビッグ スピリッツ コミックス スペシャル

 毎回書いてるような気もするが、表紙のイラストについて。この第4巻はこれまでになくでっかいアリス(とオリバー)。なんて手法なのかは分からないけど、色ガラスみたいな透明感のある彩色が素晴らしい。今回の帯の煽りは↓

火星人、/地球ノ疫病ニ/倒レル!!/ダガ、争イノ火種ガ/地上カラ消エタ/ワケデハナク…


 グレイブのもとを離れたアリスとオリバーと仲間たちは、途中象使いのマラティと合流。彼らを追うグレイブ商会から逃れるべく、破壊された街の瓦礫の山を抜けて、ひとまずアリスの家へと向かう。ところがアリスがかつて見知っていたはずの街は、火星からきた植物に覆われ、すっかり様変わりしてしまっていた。火星人は地球の疫病に侵されて滅びつつあったが、彼らの持ち込んだトライポッドと、それを起動させるための「人間モドキ」は地上に残されたままである。

 時系列的にH・G・ウェルズの『宇宙戦争』の後日談にあたるこの第4巻は、SF冒険活劇というより、未曽有の惨事のあと子供たちがどう生き延びるのかって感じの話になっている。焼け跡の子供たちとかそういう雰囲気。ただ登場人物の多くがもともと「持たざるもの」だったこともあって、あまり悲壮感は感じられない。喪失のダメージがないから、むしろせいせいしたような印象を受ける。

 引き続き子供たちの心情は丁寧に描写されていて、いい意味で「世界名作劇場」っぽい。アリスのリボンのちょっとしたエピソードをはじめ、淡い恋心を描いた場面も印象に残る。ただし後半の火星人虐殺とシスターのくだりは別。この先とんでもないことはもう起こらないんじゃないか、って空気を吹き飛ばす久々の緊張感だった。この作品世界最大の不確定要素は、有事に乗じてなにかを企んでる野心家でも、主人公の子供たちでもなく、今のところ家畜のように扱われている「人間モドキ」らしい。


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Posted byserpent sea

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