大道あや『あたごの浦』

0 Comments
serpent sea
2014072201.jpg

 脇和子・脇明子再話, 大道あや画『あたごの浦 讃岐のおはなし』福音館書店 1993 こどものとも傑作集 93

 タコが陸にあがってナスビを食べまくるという民話……というわけで、引っぱり出してきた。福音館書店「こどものとも 傑作集」の一冊。最初に月刊のソフトカバーが出たのが1984年9月、このハードカバー版は1993年の3月に刊行されている。

 作画を担当した大道あやは『原爆の図』で知られる画家丸木位里の実妹(※1)。以前NHKでこの人のドキュメンタリーを見たことがあるんだけど、子供のころから大好きだった超名作絵本『ねこのごんごん』の著者が、予想以上におばあちゃんだったので驚いた。なんでも六十歳になってから絵を描きはじめたらしい。またその母親も七十歳を過ぎてから絵を描きはじめ「おばあちゃん画家」として有名だったとか。

 そんなキャラの立った作家による絵本は、見ての通りタコとタイとフグetc…で、すごくおめでたい感じ。内容も同様にハッピーで、満月の夜、陸にあがってナスビをむしゃむしゃ食べていたタコと、たまたま通りかかったタイの発案で、魚たちによる砂浜の演芸会が開かれるという話。訓話的な要素皆無でとても楽しい。詳しくは↓

 ※続きは下の「続きを読む」より。画像はクリックすると大きくなります。


2014072202.jpg

 かなり衝撃的なタコとタイの邂逅の図↑

タイ「こらこら、おたこ、おまえはそこで、なにをしよんや」
タコ「へえ、おなすびちぎって、食べよります」(p.8)


 ゆるい! こんな感じでぼやーっとストーリーが進む。二匹とも普通に陸上にいます。

2014072203.jpg

 ひとしきり(陸上で)歌ったり踊ったりしたあと、引き続き(陸上で)かくし芸大会がはじまる。これ↑はタコによる「松に下がり藤、これどうじゃ」(p.20)の図。各魚が適当っぽい形態模写をして「~これどうじゃ」とやると、観客の魚たちが「妙々々々々々」とはやし立てる。なにをやってもバカ受け。みんなノリノリだ。これが何匹分か続いて、おしまい。楽しそうでなによりです。

 作画の素晴らしさは見ての通りなので「あたごの浦」について調べてみた。といってもグーグルマップで検索してみただけなんだけど、ここが「あたごの浦」ってところがなかなか見つからない。それで普通に検索してみたところ、国会図書館の「レファレンス共同データベース」にズバリ『「あたごの浦~讃岐のおはなし」という昔話の「あたごの浦」とはどこか?』って記事が載ってた↓

 国立国会図書館レファレンス共同データベース『「あたごの浦~讃岐のおはなし」という昔話の「あたごの浦」とはどこか?』
 http://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000023332

 これによるとこの民話は高松のある家庭に代々語り伝えられてきたものらしい。で、「あたごの浦」の場所はというと、香川県高松市扇町にある「愛宕神社」近くの浜が舞台とのこと。確かに最初の場面には、浜辺にあるいい雰囲気の神社が描かれている。再度グーグルマップで見てみると、すぐに「愛宕神社」を発見↓真ん中のあたり。


大きな地図で見る

 思ってたより海から離れてるような……。周辺の海沿いも見てみたのだけれど、すっかり整備されていて、さすがに絵本に出てくるような浜辺は見当たらなかった。残念。でも本の舞台になった場所を、こうして簡単に見られるのは楽しい。昔はこの本みたいな感じだったのかな。

 というわけで絵も話も抜群に面白いこの本、置いてる図書館もあるようなので、機会があったらぜひ手にとってみて欲しい。最後の最後までつっこみ不在の、ハッピーな民話です。「読んであげるなら3才〜自分で読むなら小学校初級むき」とのこと。小さい子に読んであげれば、きっと受けること間違いなしです。


 ※1. 大道あやは兄夫婦の描いた『原爆の図』に生涯批判的で、自らは被曝しながらもそのジャンルの作品をほとんど残さなかった。唯一の例外がNHKの番組でも取りあげられてた九枚の原爆の絵で、この作品を最後に二度と筆をとらなかったという。詳しくはwiki等参照→大道あや
 
 関連記事です↓
 荻田安静『宿直草』変なタコの話 http://serpentsea.blog.fc2.com/blog-entry-317.html


 

 大道あや画『あたごの浦 讃岐のおはなし (こどものとも傑作集)』福音館書店 1993 こどものとも傑作集 93


関連記事
serpent sea
Posted byserpent sea

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply