木村心一『これはゾンビですか?〈1〉はい、魔装少女です』

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 木村心一『これはゾンビですか?〈1〉はい、魔装少女です』富士見書房 2009 富士見ファンタジア文庫

 めでたく11巻も発売されたことだし、この機会に1巻から感想文を書いてみようと思う。

「えっ! アニメ化すんの? 遅すぎる! 」というでかい文字が目に付くピンクの帯にピンクの表紙、タイトルが見当たらないけど、「1 はい、魔装少女です」←これがタイトルか?? というのが第一印象だった第1巻。
 ためしに買って読んでみたら、これが面白かった。そしてアホだった。もともと筆談キャラが大好物なので、ユーがどストライクだったってこともある。とくにユーのメモは「肉がいい」「素敵」などなど簡潔な分、歩じゃないけど想像の幅が広がって実にいい。それからユーの紫のドレスをはじめとする、各キャラのコスも素晴らしい(歩の魔装少女コスは除く)。

 この1巻では冒頭で主人公の歩が、空から落ちてきた魔装少女のハルナと出会うところからはじまる。絵に描いたような「落ちもの」だ。二人で帰宅すると居間ではネクロマンサーのユーがお茶飲んでいる。主人公の非日常は少し前から始まっていたらしい。というか一回死んで、すでにゾンビ化している。
 本書のゾンビは、なにをされても死なない、リミッターが外れているからバカ力が出る、太陽光線に弱い、という点が特徴で、あとは普通の人間と変わらない。ロメロゾンビやブードゥーゾンビのイメージとは相当異なっている。ネクロマンサーや、さらっと夕食に混ざってる吸血忍者についても、作劇上足枷になりそうな設定はあっさりカット、俺設定満載のキャラクター造形となっていて清々しい。キャラが多くても著者が好みで設定の枝葉をはらっているから、煩雑にならないのがいい。

 そうこうしてるうちにメインの四人が出揃ってしまう。人集めにだらだらとページを割かない。キャラの可愛さが最重要な本書において、さっさとみんな揃えて、互いの初対面のリアクションでキャラの性格描写までしてしまおうという判断だろう、多分。そしてその狙いはばっちり成功していると思う。ユーとハルナの静かに互いを牽制し合うかのようなリアクションは実によかった。途中、回想として挿入されるユーと歩のなれそめも、珍しくしっとりとしたいい雰囲気だった。

 本書はプロローグに続いて、一応繋がりのある4本の短編、エピローグという構成。第一話で面子が揃って以降は「メガロ」という動物のぬいぐるみの形態をした敵キャラを倒したり、ボーリングや買い物に行ってドタバタするという通常営業に入る。何度が戦闘描写があるけれど、一人称で状況を解説しながら戦うというのはさすがに苦しそうだ。
 4本の短編を繋ぐストーリーは、ゾンビ化する前の歩を殺したのは誰かというミステリー仕立てになっている。早々とバレてしまってるような気もするが、犯人が判明して、それをさらに影から操る者の存在を匂わせて本編は終わる。あちこちに次巻以降に使えそうなタネがばらまかれているし、まだまだ語り足りないところが多く残されてる感じ。
 
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