『幽霊・妖怪画大全集』

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serpent sea
 先週末、愛知県名古屋市で開催されている『幽霊・妖怪画大全集』という展覧会に行ってきました。去年は岡崎市の『妖怪道五十三次 鬼太郎たちとめぐる東海道の旅』、一昨年は西尾市の『岩瀬文庫怪談尽くし』(←前の記事へのリンクです)と、なんだかんだで毎年、愛知県で催される怪奇系の展覧会を見にいってる。怪談好きなのかな愛知県人。

 この展覧会は福岡市博物館が所蔵する幽霊や妖怪の絵画や錦絵を大大大公開する巡回展で、平成二十四年の福岡から、大阪→神奈川→金沢→名古屋ときて、今年はこのあと七月十九日から山梨で開催されるそうです。出品総数は百六十点。百六十点全部、幽霊と妖怪の絵! ぎっしり! (ただし会期中に多少展示作品の入れ替えがあるらしいので、全部見たいって人は何度か足を運ぶ必要がありそう)

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 というわけで買ってきたもの。いつも通りの図録とポストカード、それから、ピンバッジです……。

 画像多いので収納しました。続きは下の「続きを読む」より。


 会場の展示は、「プロローグ 笑う骸骨」「第1章 幽霊画の世界 1-1 肉筆幽霊画」「1-2 歌舞伎の幽霊画」「第2章 妖怪画の世界 2-1 百鬼夜行と妖怪図巻」「2-2 鬼」「2-3 天狗」「2-4 人間」「2-5 妖怪動物園」「2-6 実録 化物退治」という構成で、図録もこれに沿って編集されている。
 名古屋市博物館の会場は「幽霊画の世界」と「妖怪画の世界」の二室に分けられていて、「1室め(幽霊の世界)がどうしても怖い方は2室め(妖怪の世界)へ向かってください」という案内がされていた。そういえば小さい子も見にきてたな。

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「プロローグ 笑う骸骨」には伝・円山応挙の『波上白骨座禅図』や、でっかい骸骨の描かれた歌川国芳の『相馬の古内裏』、『九相図』などが展示されている。「九相図」は屋外に放置した遺体の変化を、九段階に分けて描写したもの。鎌倉時代の『九相詩絵巻』が有名だが、↑これは作者不詳の明治時代のもの。一コマ(?)めに生前の姿、死にたてほやほやの姿が入る場合は、決まって美女が描かれている。腐敗した姿とのギャップから無常観を出すためのチョイスかと思っていたら、図録では「美女が描かれるのは、僧侶(男性)にとっての煩悩の対象だからである」(p17)と解説されている。

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 今回の展覧会の目玉は全百六十点のうち三十四点を占める「1-1 肉筆幽霊画」。これがすごかった。円山応挙の『幽霊図』をはじめ有名どころがずらり。これだけの「肉筆幽霊画」をまとめて見る機会なんてめったにない。会場の薄暗さも相まって抜群の雰囲気。以前感想を書いた安村敏信『肉筆幽霊画の世界』(←前の記事へのリンクです)に載ってた作品のうち、二十七点を間近で見ることができる(『波上白骨座禅図』『髏相図』を含めると二十九点。福岡市博物館の所蔵品のなかでは、顔が女性器になってる月岡芳年の『幽霊図』が唯一今回未展示)。
 ↑これは河鍋暁斎の『幽霊図』。この絵は上記の『肉筆幽霊画の世界』にも収録されてたんだけど、紙面で見る限りかなり地味な絵で、とくに注目して見たことがなかった。ところが実物を見てびっくり! 薄闇からじわーっと滲み出るような淡い姿が、見事に表現されている。実物と写真のギャップが一番激しいのがこの絵だったと思う。その幽妙さは今回の図録でもあまり伝わってはこない。やっぱり実物を見るのっていいな。

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「2-1 百鬼夜行と妖怪図巻」より尾形守房の『百鬼夜行絵巻』。大映映画『妖怪百物語』(1968)のイメージソースとして有名な、室町時代の『百鬼夜行絵巻』を踏襲した作品。会期中に場面替えがされる。もちろん図録には全部収録されている。上段の中央に謎の赤い妖怪がいる(後述)。

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「2-4 人間」より月岡芳年の『和漢百物語 清姫』。『今昔物語集』にも出てくるヘビ女業界の大スター、「安珍と清姫」『道成寺』の清姫だ。月岡芳年は後に妖怪画の連作『新形三十六怪撰』(←詳しくはwiki等参照)のなかでも、この作品と非常によく似た構図の清姫を描いている。
 月岡芳年の作品は二十九点も展示されていて、今回の展覧会では最多。無惨絵で知られる月岡芳年だが、サムライがヒーローばりに躍動するかっこいい絵も多い。

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 グッズ類。ポストカードは幽霊画を中心に十枚、ヘビ女業界の大スターの清姫は外せないところ。それから右下の三つの赤いの(『百鬼夜行絵巻』に出てくる謎の妖怪)はピンバッジです……。全七種のガチャポンで、一回三百円。千円札を崩してもらって挑んだところ、三回連続でこれが出た。……なんでだよ!ヽ(`Д´)ノ
 ……いやぁ、ほんとになんかの祟りかと思いました。ショップは鬼太郎や妖怪ウォッチが入り乱れて、カオスな状態。オフィシャルグッズにはほかにも、うちわや手ぬぐいがあった。

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 会場の名古屋市博物館はどっしりとした立派な建物。二階の博物館も土器や人骨が並んでて興味深かったです。

 実は先週は京都で「京都大アンティークフェア」がやっていて、この展覧会とどっちにするか悩んだあげく、ギリギリになってこっちにしました。京都には夏に『バルテュス展』を見にいく予定だし、この展覧会の会期が七月の十三日までということだったので。でもいってよかった! すごかった。普段は目当てのものや、気に入ったものだけじっと見るだけだから、あまり時間はかからないのだけれど、今回は気付いたら四時間近く経ってて驚いた。最近見にいったなかでは一番の展覧会でした。


 名古屋市博物館『幽霊・妖怪画大全集』↓グッズも紹介されてます。
 http://yurei-yokai-nagoya.com/


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serpent sea
Posted byserpent sea

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serpent sea  
Re: No title

>>ウォーリックさん
コメントありがとうございます!

上の画像はちょっと地味めで、マイナーっぽいものばかりですが、他にもすごいのが沢山ありました。
それこそ霊感ある人連れてったら、いい感じのコメントしてくれそうなくらい。
お母さんに抱っこされて、ちらっとも絵を見てない子供の来場者がいたのが面白かったです。

今回の展覧会は本当に良かったので、怖いの好きなウォーリックさんにはおすすめできると思います。
もしも機会があれば足を運んでみてくださいね。

>>ジャパンホラー
子供のころ日本映画やドラマを見たあとはトイレに行けなくなったのに、外国製はほぼ平気。
日本のって得体のしれない不気味なものを想像するの上手いですよね。
しかも現実をほんのちょっとだけ歪めるだけで、効果は大きい。
ウォーリックさんご指摘のスローモーションでゆっくり迫ってくる奴もそうだし、
変なポーズの幽霊とか。口の中が真っ黒とかetc……

これなんとなく、ロボット工学の「不気味の谷」の話に似てると思います。
wikiからのですが、
「人間のロボットに対する感情的反応について、ロボットがその外観や動作において、より人間らしく
作られるようになるにつれ、より好感的、共感的になっていくが、ある時点で突然強い嫌悪感に変わる」ってやつです。
日本のちょっと歪めるって手法は、この「不気味の谷」を意識的に作り出して、
幽霊のデザインや演出に効果的に用いてるんじゃないかと。

外国製のは相当安い映画でも表現がゴージャスで、
頑張ってやればやるほど「不気味の谷」から遠くなって、
びっくりはするけど、トイレに行けなくなるような怖さは失われていくように思います。

もちろん日本のじとっとしたのも、外国のゴージャスなのもどっちも好きなんですけどね。

2014/06/26 (Thu) 20:37 | EDIT | REPLY |   
ウォーリック  
No title

こんにちは!

こういうのを見ると、やっぱり日本の幽霊って
ハンパないですよね。日本人の私たちでも怖いん
ですものw

西洋の目一杯怖がらせてやりましょう的に頑張って
いる幽霊なんて足元にも及ばない、この ”ナチュラルな
おどろおどろしさ” は一体どこからくるのでしょう。

じっとりと湿った感じのジャパンホラー。

呪怨でひざ頭をカリカリする白塗り坊やや、井戸から
四つん這いの女が這い出してきたり、はたまた映画サイレン
で出てきたようなスローモーションのゾンビなんて、
海外のオカルトからは絶対に出てこない発想だと
思います。遅い方がなんだか怖いんですw

でもちょっと名古屋は遠い...次の山梨にかけて
みようかしらん。

2014/06/26 (Thu) 10:31 | EDIT | REPLY |   

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