スティーヴン・キング『子取り鬼』

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serpent sea
 

 スティーブン・キング(Stephen Edwin King)著, 高畠文夫訳『子取り鬼』("The Boogeymen"『ナイトシフト〈Ⅰ〉深夜勤務』扶桑社 1988 扶桑社ミステリー 所収)

 小泉八雲の「むじな」を彷彿とさせる構成のキレのある短編。
 原題の「Boogeymen」(ブギーマン)は多くの映画や小説などに様々な形態で登場するが、もとは民間伝承(とくに米国の)における怪人(怪物)の名称で、子供にとって漠然とした「怖ろしいもの」を表象しているといわれている。クローゼットやベッドの下に潜み、「悪い子」を脅したりさらったり、ときには殺して食べたりするともいう。このような存在は、日本では現われる場所や特徴で極端に細分化されているが、一番ぴったりなのはざっくりした「おばけ」って呼称だろうか。

 そんな「ブギーマン」に三人の子供を殺されたという男がカウンセリングを受ける。彼によると「ブギーマン」は子供部屋のクローゼットのなかに潜んでいて、子供たちは事前にそれに気付いていたらしい。ところが彼はそれに取り合おうとしなかった、そのせいで子供たちは死んでしまった。そんな罪悪感にかられている。

 ほぼ全編が男と精神科医とのやり取りで構成された作品。病死、事故死と判断された三人の子供たちの凄惨な死にざまと、男の後悔が語られる。彼の思い出のなかでは、不思議と彼自身の存在感は希薄で、読み進めるうちに「あちゃーこの人、やっちゃってるよー」って雰囲気が濃厚になってくる。告白の所々に重大な欠落があるように感じられる。それでなくても男は著者の得意なアルコール中毒っぽいキャラで、めちゃ情緒不安定だ。
 ところがそんな「現代の(といってもちょっと昔なんだけど)アメリカ社会の病巣をえぐるスリラー」って感じのオーラをさんざんまき散らしたにも関わらず、ラストはそれとはまったくかけ離れた超常的な地点に着地する。実に著者の作品らしい。

 この作品は八十年代のホラー(ビデオ)ブーム真っ盛りのころ『スティーブン・キングのナイトシフト・コレクション』(1983)のタイトルで映像化されている。東芝映像ソフトからVHSも発売されてたはずなのだけれど、残念ながら未見。二話入りのオムニバスで、なかなかの良作らしい。


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serpent sea
Posted byserpent sea

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読書ログ  
ご返信ありがとうございます。

いつか機会がありましたら、よろしくお願い致します。
スタッフ一同、お待ちしております。

2014/07/07 (Mon) 08:41 | EDIT | REPLY |   
serpent sea  
Re: はじめまして。

>>読書ログさん

コメントありがとうございました!
最近このブログで手一杯になってしまってるので、
もう少し余裕ができたら参加させていただきたいと思います!

2014/06/26 (Thu) 20:28 | EDIT | REPLY |   
読書ログ  
はじめまして。

私は「読書ログ」という読んだ本の管理やレビューを書くサイトの運営をしています。

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2014/06/23 (Mon) 13:12 | EDIT | REPLY |   

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