楳図かずお『神の左手悪魔の右手 HORROR-3 女王蜘蛛の舌』

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 楳図かずお『神の左手悪魔の右手 HORROR-3 女王蜘蛛の舌』(『神の左手悪魔の右手〈3〉』小学館 1987 ビッグコミックス 所収)

 夏休み、想と泉は知人の青年医師に連れられて、彼の友人のペンションを訪れた。想たちを迎え入れた友人の様子は明らかにおかしかった。げっそりとやつれ、著しく体調を崩しているように見える。青年医師はこの友人の診察のためにこのペンションを訪れたらしい。そんな大人の事情には頓着しない想は、到着早々捕虫網をかついで森に向かう。そしてたまたま迷い込んだ別荘の窓際に、美しい女の姿を見かけたのだった。彼女はペンションの方向を眺めながら不吉な言葉をつぶやいた。「今夜……、今夜こそは……」
 その夜、青年医師の友人は、おびただしい数の蜘蛛の群れに襲われて怪死する。想が必死に振り回した捕虫網には、一匹の巨大な蜘蛛が捕らえられていた。

 著者のこの時点までのホラージャンルの作品を総括するような、渾身の作品が続く。名作『紅グモ』を彷彿とさせるこのエピソードも、生活空間にざわざわと侵入してくる怪異を描き、生理的な拒否反応をとことん誘発する。精密に描き込まれた蜘蛛がうじゃうじゃ登場するから、蜘蛛恐怖症の人、苦手な人は回避推奨です。とくにラストに近づくに連れて、とんでもない数の蜘蛛がびっしりで、苦手じゃなくてもうげ〜っとなる。体の内側から喰われるのは、外からがぶっとやられるよりもきつい。
 最初から最後まで蜘蛛の大群と主人公の想(と青年医師)とのチェイスに終始する構成ながら、巻き込まれて気の毒なことになる人や、自分で頭を切断するおっさんなんかも出てくるから最後まで読み飽きない。もちろん作画は非常に美しい。

 ところでこのシリーズには著者の作品としては珍しく、悪(人に害をなす怪異)に対峙して事態を収拾する能力を持った主人公が配されている。さすがにシンプルな正義のヒーローって感じではないし、その能力(悪を予知、感知する能力)は主に想と読者を怖がらせる方面に発揮されているのだが、「猫目小僧」や「おろち」とは明らかに一線を画すキャラクターとなっている。



『神の左手悪魔の右手〈3〉』
 小学館 1987 ビッグコミックス
 著:楳図かずお

 収録作品
 『HORROR-3 女王蜘蛛の舌』

 ISBN-13:978-4-0918-1373-2
 ISBN-10:4-0918-1373-9
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Posted byserpent sea

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