松村進吉『「超」怖い話 P (ロー)』

0 Comments
serpent sea
 

 松村進吉『「超」怖い話 P (ロー)』竹書房 2010 竹書房文庫

 4年ほど前に発売されたシリーズ27冊めの本。竹書房版に限っては発売時に読んで、忘れたころに読み返して(読み返す頻度高いです)、また読み返してから感想書いてるんだけど、読み返すたびに不思議と印象がどんどん変わる。すごくインパクトを受けたはずなのに、再読するとそれほどでもなかったり、最初はぱっとしないなぁって感じだったのが、底光りするような怖い本になってたり、こんな話あったっけ?ってことも度々ある。だから読み飽きないのかなと思う。

 この本にはほどよい長さのエピソードが30話収録されている。不思議系の話は少なめ、幽霊がしっかり出てくる話が中心。飛び抜けてインパクトの強いエピソードはないけれど、粒揃いの幽霊談が集められている。

「湿る部屋」ナメクジが大量発生するアパートの怪談。そもそも室内にナメクジが大量発生してる時点で怪談だし、それを黙々と始末する体験者の感覚も相当おかしい。幽霊とナメクジの大群、どっちが怖いだろうなんてことを考えてしまうが、ありがたくないことにこのエピソードの幽霊には、ナメクジに似た属性が備わっているようだ。ちなみにナメクジのなかには肉食のものもいるらしい。

「ロケット花火」中学生だった体験者が学校に宿泊したときの話。真夜中、遠くにロケット花火の風切り音を聞いた体験者は、同室の友人二人とともに宿泊室を抜け出した。ありがちな学校の怪談で、幽霊がバーンと出てくるのかと思いきや、非常に不気味でわけの分からない展開を見せる。体験者たちが見た風切り音の正体とは?
 このエピソードにはなぜか不思議なSFっぽさを感じていたのだけれど、あれだ『SF/ボディ・スナッチャー』(1978)。

「山拾い」上記の「ロケット花火」が『SF/ボディ・スナッチャー』なら、この「山拾い」にはキューブリックの『シャイニング』(1980)に通じる怖ろしさがある。体験者の女性が山歩きの途中で、投棄されていたらしいボールを拾った直後、怪異に見舞われる。天候の悪い山の雰囲気も良好で、好きなエピソードだ。
 山の民話や怪談に「山の神様の持ち物」にまつわる話がある。「山の神様の持ち物」を勝手に持ち出した者やその家族が障りを受けるという話で、「持ち物」は木や動物、蜂の巣や石ころ一つだったりする。慌ててそれをもとに戻すとたちまち恢復したというパターンが多い。体験者が拾ったボールもそうした類いのものだったのだろうか。

「美容」幽霊などの怪異そのものはほとんど描かれず、それらから強烈な影響を受ける女性の描写に終始するエピソード。彼女は体験者(話者)の大学の知人。もともとは冴えない、決して美人とはいえないタイプの女性だったが、あるときを境に奇妙な魅力を発散させるようになった。男性のあいだでは最近彼女がかわいいと噂になりはじめ、それと同じくらい「死体みたい」と敬遠する者も出たという。不吉で病的な魅力である。肉体ばかりか精神にまで怪異に浸食され、どんどん病み、衰えていく彼女の異様な様子が怖ろしい。死臭のするような嫌なエピソードだった。

「縦穴」直球のホーンテッドマンションもの。ただしその原因は明らかにされず、最後に出てきた霊能者が発した「縦穴」という言葉がそれを表象しているらしい。ある分譲マンションな移り住んだ途端、体験者の両親に次々に異変が生じる。怪奇現象自体は地味で軽微、というかほとんど描写されないが、次第におかしくなっていく両親の様子が不気味。彼らに自覚症状はないらしい。手をこまぬくしかなかった体験者だったが、あるときマンションを訪れた親戚に体験者自身の様子もおかしいと指摘される。
 ささやななえこの名作『空ほ石の…』を彷彿とさせる一編。得体のしれない不安感、嫌悪感を感じる体験者の心情が、過不足なく表現されている。賃貸にしとけばよかったのに……。

 上記のほかにも、「廃車」「忌橋」「情動」「毒舌と斜視」などがよかった。なかでも「毒舌と斜視」は、都市伝説が形成されていく過程が怪談に取り込まれているようで面白かった。
 最初に書いた通りゴーストストーリーが多いので、まとめて幽霊出てくるやつ読みたい!って人にはおすすめ。



『「超」怖い話 P (ロー)』
 竹書房 2010 竹書房文庫
 著:松村進吉

 ISBN-13:978-4-8124-4260-9
 ISBN-10:4-8124-4260-5
関連記事
serpent sea
Posted byserpent sea

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply