伊藤潤二『うずまき 第12話 台風1号』

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 伊藤潤二『うずまき 第12話 台風1号』(『うずまき』小学館 2000 ビッグ コミックス ワイド 所収)

 前回の病院の続報がものすごく気になるところだけど、そんなの関係なしにやってくるのが天災。黒渦町に台風が襲来した。これまでうずまきの影響を感知してこなかった黒渦町の一般住民にとって、どうにかキープされてきた日常が砕け散る、ストーリー上のターニングポイントとなるエピソードだ。

 超大型の台風1号には顕著な特徴があった。それは台風の「目」が、地上から見上げれば視認できるほどに、極端に小さいこと。それから黒渦町の上空に停滞したまま、まったく動かないこと。秀一によると、この異常な停滞にはとんでもない理由があるらしい。台風1号はよりによって桐絵に惚れてしまったというのだ。
 台風の目は上空から桐絵を見つめ、つけ狙い、隙あらば吸い上げようとする。秀一と桐絵が逃げまどうあいだにも、町の被害はどんどん拡大していく。最終的にこの台風は火葬場の煙と同様に、桐絵の家のそばのトンボ池に吸い込まれ、消えてしまったという。とうとう町がぶっ壊れてしまったが、この一連の騒動はこれからはじまる盛大な怪奇現象の幕開けにすぎなかった。準備万端整ったって感じ。

 前回までの正調ホラー(?)な雰囲気とは打って変わって、伊藤潤二ワールド全開の第12話。台風のペット化という先例があるとはいえ、ストーカー台風という無茶な発想は相変わらずおもしろい。ただ例えば前回の阿鼻叫喚ぶりと比較すると、通常の台風被害の描写に限りなく近いから、絵面はスケールのでっかさのわりに結構地味だったりする。台風の目もほんとに普通の目だし、グロっぽい描写はほとんど見られない。しかし著者はこのウイークポイントを奇怪な装飾で過剰に補い、このエピソードのアイデアをさらに押し進めて、後に『地獄星レミナ』というSF怪作をものにしている。
 
 それにしても秀一は久々に出てきたと思ったら酷いな。最初の3ページ、病み方がシュールすぎて思わず笑ってしまう。
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Posted byserpent sea

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