伊藤潤二『うずまき 第11話 臍帯』

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 伊藤潤二『うずまき 第11話 臍帯』(『うずまき』小学館 2000 ビッグ コミックス ワイド 所収)

 前回、体中を蚊に刺されて入院し、吸血鬼化した妊婦たちが揃って出産する。前回の出来事はどう処理されたのか、びびっているのは桐絵一人で、病院も患者たちもみな通常営業だ。産まれた赤ん坊たちには一見なんの異常もなかった。かわいらしい普通の赤ちゃんだが、しかしよく見ると腹部が異様に膨らんでいるし、その泣き声は桐絵にとって激しく耳障りだった。
 ちょうどそのころ病院食のメニューに変化が生じていた。見慣れない食材が用いられているのだ。とても体にいいキノコだというが、血なまぐさくて桐絵の口にはまったく合わない。ウンザリした桐絵はたまたま通りかかった新生児室で、赤ん坊たちのヒソヒソ話を聞いてしまう。「早く戻りたい。お袋の胎内に」「やはり子宮の中が一番だな」「しかし本当に戻れるのかなあ?」(p.347) そのとき赤ん坊のベビー服のボタンが弾け飛び、赤ん坊の腹部から巨大なキノコのような器官がにょっきり姿を現わした。

 前回に続いて町内の病院「黒渦病院」を舞台にした、非常に気色の悪いエピソードで、スプラッター色も濃厚。
「巨大なキノコのような器官」というのはタイトルにある「臍帯」と胎盤で、それが赤ん坊にくっ付いたまま硬化してキノコのようになっている。臍帯が柄で胎盤が傘ってわけだ。質感からなにから無性に気味の悪いデザインなんだけど、柔らかい赤ん坊から生えてるってところが、一番のきもいポイントになっていると思う。考えてみればフジツボのミームや蓮コラも、ぎっしりみしっりというキモさのほかに、この固いものが柔らかいものに食い込んだり、生えてるという強烈な異物感が、生理的拒否反応につながっているように思う。本作の「ヒトマイマイ」もまた然り。あー気色悪い。

 臍帯キノコ関連がこのエピソードの一番の見せ場になっているが、ほかにも素っ裸の人工妊婦が両手を上げて手術室から出てくるシーン(クラシックでいい雰囲気)など、見せ場は多い。うずまきとはあまり……というかほとんど関係ないような気もするが、前編にあたる前回の「蚊柱」とあわせて、スプラッターものとしての完成度は非常に高く、投げっぱなしのラストも実にそれらしい。

 ※フキダシからの引用は、改行を調整しています。
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