福満しげゆき『就職難!! ゾンビ取りガール〈1〉』

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 福満しげゆき『就職難!! ゾンビ取りガール〈1〉』講談社 2013 モーニングKC

 工業高校出身の著者による最高峰のゾンビ漫画。カテゴライズするなら、日常系恋愛ゾンビ漫画って感じ。絵柄からギャグ漫画なのかと思いきや、全然違っていた。

 主人公は零細ゾンビ回収業者「ゾンビバスターズ」に勤務する冴えない青年。最近彼の勤務先にバイトの女の子が入ってきた。いかにも女子向きでない業種だが、就職難のご時世ならではの僥倖だ。しかもかなりかわいい。彼女を辞めさせるわけにはいかない。そんなわけで主人公の「先輩」は、快適で安全な職場をアピールすべく彼女になにくれとなく気を回すのだが、腐乱した死体をリアカーで運びながらである。全然説得力がない。ところがそんな「先輩」をよそに、現場経験を重ねる「後輩ちゃん」は、ゾンビの捕獲にスリリングな悦びを覚えはじめていた。

 これまでに描かれた数多くのゾンビ漫画のなかで、ゾンビのキャラクターは作劇の都合や著者の好みによって、様々にカスタマイズされてきた。いちいち例はあげないが、その自由奔放さは古今東西の映画に登場するカスタムゾンビ以上だと思う。この作品に登場するゾンビは著者のゾンビ中毒を反映して、嬉しいことに実にオーソドックスな「ロメロ型」ゾンビとして描かれている。異なっているのは完全に腐敗するか燃やされでもしない限り、頭を吹き飛ばされても死なないところ、それと絶対数。

 著者の超長い「あとがき」によると、この作品でのゾンビとのエンカウント率は、だいたい「工業高校で丸一日過ごして、女の生徒を見かける頻度」、「1日で1人〜2人見かけるか、もしくはまったく見かけないか」と設定されてるらしく、そのおかげで「日常」が見事にキープされている。もちろんそれなりの仕事に従事する主人公たちは高頻度でゾンビに接触するが、あくまでも仕事の都合で……というノリで、決して日常の枠からははみ出さない。素晴らしいバランス感覚だ。主人公にとってはゾンビの存在よりも、職場のかわいい「後輩ちゃん」の方がよっぽど非日常的らしい。
 この「後輩ちゃん」、主人公の言葉を借りると「わりとキリッとした美人、清潔感アリ」。ちょっとぼーっとした感じの子で、あとお尻とおっぱいがでっかい。そんな彼女が家に帰ると姉にいじらたり、ゾンビの捕獲にわくわくしてたりするのが実にいい。すごく特徴的で癖のある絵柄なんだけど、著者のこだわりの賜物、作業着姿の「後輩ちゃん」は強烈にかわいく見える。

 超長い「あとがき」のなかで、著者は『バタリアン』(1985)を推している(それと「バイオハザード・シリーズ」(2002〜)。その元ネタ『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968)にはさらっと触れている程度だが、作品には終始『ナイト・オブ・〜』の冒頭の墓地のシーン(なんてことのない風景のなかにポツンと黒い人影が見える)を彷彿とさせる、微妙な不安感と違和感が漂っていて、それが基調低音となっている。とくにゾンビファンにおすすめ。



『就職難!! ゾンビ取りガール〈1〉』
 講談社 2013 モーニングKC
 著者:福満しげゆき

 ISBN-13:978-4-0638-7193-7
 ISBN-10:4-0638-7193-2
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Posted byserpent sea

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