スティーブン・キング『トウモロコシ畑の子供たち』

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 スティーブン・キング(Stephen Edwin King)著, 高畠文夫訳『トウモロコシ畑の子供たち』("Children of the Corn"『ナイトシフト〈Ⅱ〉トウモロコシ畑の子供たち』扶桑社 1988 扶桑社ミステリー 所収)

 80年代のホラー(ビデオ)ブームのころ、著者が出演していた『クリープショー』(1982)なんかに紛れて、ムック本などでちょこちょこ紹介されてた映画『チルドレン・オブ・ザ・コーン』(1984)の原作がこの作品だ。当時なけなしの小遣いをはたいてレンタルで見た。肝心の内容はちっとも覚えてなかったのだけど、赤いVHSのジャケットはやけにかっこよくて、今でもそればかり印象に残っている。ちなみに上記ムック本によると映画の評判はあまり芳しくなかったようだが、原作がよっぽどよかったのか何本もの続編が作られている。

 で、あれから数十年、先月たまたまつけてたCSで放送されててびっくりした。全然覚えてなかったから、全然懐かしくもなかったけど、思ってたより断然よかった。もっと酷くて記憶を封印してたのかと思いきや、単に記憶力がないだけだったよ!
 そんな映画の余韻の冷めやらぬうちに「etc文庫」って段ボール箱から発掘してきたのが本作『トウモロコシ畑の子供たち』、『ナイトシフト〈Ⅱ〉』という短編集の表題作だ。ストーリーは広大なトウモロコシ畑のなかで、道に迷った夫婦が何者かに襲われるというもので、この大まかな筋立ては原作、映画ともに共通している。で、その「何者か」っていうのが邪悪な力に突き動かされている「トウモロコシ畑の子供たち」なんだけど、共通しているのはこのくらいで、原作と映画は怖さの種類の全く異なる作品となっている。

 原作では子供の存在をギリギリまで明かさずに、サスペンスを盛り上げている。最初に一人死なせているのがうまくミスリードになって、タイトルの「子供たち」が加害者なのか被害者なのかの判断を難しくしているように思う。また子供の存在が明らかになった時点から、激しく転調して一気に凄惨なエンディングに向かう。「邪悪な力」は仄めかすような描写で寸止めされていて、余韻を残したまま終わる。
 それに対して映画は冒頭(一番の見せ場かも)からネタバレしてるので、原作の持ち味は大幅に失われている。主人公夫妻が子供たちと会敵するまでの緊張感を支えるのは、広大なトウモロコシ畑と不穏に蠢く雲のビジュアルだ。さすがに映像の威力は大きい。後半は『怪奇大作戦』に出てきそうな光る物体Xが登場したり、藁人形がすぽーんって感じで飛び上がったりで、原作とは違った意味でおもしろい映画になっている。

 スティーブン・キングの作品はどれを読んでもすごく「アメリカ」って感じがする。しかも冴えない「アメリカ」。スクールカーストでいうナードの「アメリカ」だ。本作は短編なこともあって、ぱっとしない日常の事象を執拗に描写するという著者のスタイルはかなり控えめになっている。それでも舞台が舞台なだけに、充分に「アメリカ」って感じ。



『ナイトシフト〈Ⅱ〉トウモロコシ畑の子供たち』
 扶桑社 1988 扶桑社ミステリー
 著者:スティーブン・キング(Stephen Edwin King)
 訳者:高畠文夫

 ISBN-13:978-4-5940-0320-3
 ISBN-10:4-5940-0320-6


 DVD↓ジャケットは昔見たVHSと同じ公開時のポスターのデザインをもとにしたもの。かっこいい。ヒロイン(妻)はサラ・コナーのリンダ・ハミルトン。

 チルドレン・オブ・ザ・コーン [DVD]』J.V.D. 2002
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serpent sea
Posted byserpent sea

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serpent sea  
Re: No title

>>初めての株さん
ありがとうございます! またよろしくお願いします!

2014/06/12 (Thu) 00:33 | EDIT | REPLY |   
初めての株  
No title

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!

2014/06/10 (Tue) 12:07 | EDIT | REPLY |   

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