樋口明雄『続「超」怖い話』

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 樋口明雄編著『続「超」怖い話』勁文社 1993 勁文社文庫21 Q-016

「「超」怖い話・シリーズ」の変遷については前に少し書いたので割愛。本書は勁文社文庫版の二冊めで、1992年に刊行された新書判『「超」怖い話2』を再編集したもの(2話削られている)。この時点で編著者が交代している。
 中身は「霊の章」「妙の章」「奇の章」「妖の章」「変の章」という五つの章に分かれていて、それぞれにゆるく分類されたエピソードが収録されている。全体の印象としては、古き佳き怪奇読物って感じだった前巻と比較して、ぐぐっとシリーズの近作に近づいていて、なかなか読み応えがあった。印象に残ったエピソードをあげると↓

「霊の章」より「富士の哀話」
 富士山にドライブに出た夫婦が樹海で自殺した女性の霊と共感し、彼女が最後に辿った旅路をめぐるという話。死者の思いを追体験した夫妻に女性の霊が挨拶に来るあたり、出来過ぎって気がものすごくするけど、全体に漂う寂寞とした雰囲気は上々。描写が押さえ気味で、大げさにお涙頂戴になってないのもよかった。

「妙の章」より「テープに録音された声」
 聞きたいラジオ番組をラジカセの留守録機能(そんな機能あったんだ!)で録音したところ、肝心な番組は録れておらず、かわりに幼い少女が囁きあう声が録音されていた。それはタンスの上で埃まみれになっている、二体の少女人形が交わした言葉に違いなかった。
 古典的な怪談ネタながら、留守録を聞く体験者の背後の空間の緊張感のある静けさ、じとっと様子を窺う人形の視線を巧みに想像させて、ぞくっとくる一編。人形たちの会話が身に詰まされる。

「奇の章」より「桜の樹の下で……」
 子供のころインコの死骸を埋めるために桜の樹の根元を掘ってみると、大人の人差し指、それも付け根からちぎれた人差し指が出てきて、土の上をもぞもぞ這い回った。まるで古賀新一のマンガのような気味の悪い話。はじめでっかいミミズに見えたというのがリアルだ。このエピソードもまた「泥まみれで蠢く人差し指」のイメージを鮮明に描き出している。

「妖の章」より「石へ……」
 とある旧家で暮らしていた体験者が、幼少時に体験した話。真夜中、ひとりで汲取式のトイレに向かった体験者は、ある部屋の障子の前で立ちどまった。そこは「何があっても、便所の隣にある部屋に入ってはならない」(p.175)という「開かずの間」だった。ふいに障子の破れる音がした。見ると一本の指が障子を突き破って出ている。指は障子を破りながらゆっくりと移動し、不完全ながら「石へ」という文字を書いた。
 誰もいないはずの部屋から障子を破って突き出した指が文字を書く。ドカンと幽霊が現れるような話と比べると地味な現象だけれど、こっち側と向こう側を区切る障子紙の効果は絶大。嫌な感じで想像力を刺激されて、とても気味が悪かった。ブラインド効果ってやつだ。オチが少々蛇足っぽいような気もするが、印象的なエピソードだった。

 という感じで4編選んでみたのだけど、「富士山」「人形」「桜」「障子」って感じで、めっちゃ和風なラインナップになった。これはまったくたまたまで、本書全体が和風なわけではない。またこの4編の他にも「妖怪」「踊る爺さん」など、おもしろい話がいくつもあった。警察官の体験談が複数話収録されているのも結構珍しいと思う。

 最初にシリーズの近作に近くなってるって書いたけど、他の目立った特徴としては、特定の体験者から複数の話を聞き取っていること、「パソコン通信」を積極的に用いて情報を収集しているところがあげられる。このあたりの特徴は最近のシリーズにもしっかりと受け継がれている。それから前巻の感想で顕著な点として書いた「著者による考察」がかなり削られて、現行の「実話怪談集」の体裁が整いつつあるように感じた。全55話収録。



『続「超」怖い話』
 勁文社 1993 勁文社文庫21 Q-016
 著者:樋口明雄

 ISBN-13:978-4-7669-1823-6
 ISBN-10:4-7669-1823-1
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Posted byserpent sea

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