伊藤潤二『うずまき 第10話 蚊柱』

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 伊藤潤二『うずまき 第10話 蚊柱』(『うずまき』小学館 2000 ビッグ コミックス ワイド 所収)

 この「ビッグ コミックス ワイド版」には全部で20話が収録されているから、この第10話でようやくちょうど半分。単一のテーマ限定の連作ってことで、さすがにいいかげんネタ切れしそうなものだけど、著者の想像力は尽きることなく増々シフトアップしていく。

 前回「黒い灯台」の一件で負傷した桐絵は、町内の病院に入院することになった。そんな桐絵の目下の悩みは、今年の夏の「蚊」の多さ。病室にまで入り込み、渦を巻いて飛行する。屋外では異常発生した蚊の群れが、らせん状の巨大な「蚊柱」を作っている。この雄が群飛する「蚊柱」の中に、数匹の雌が飛び込んで交尾をするのだ。
 ある日、少しばかり快復した桐絵は、病院の庭の茂みのなかに変死体を発見してしまう。全身穴だらけにされた死体からは血液が抜きとられていた。同時に体中を蚊に刺され体調を崩した妊婦が、十人以上も運び込まれるという出来事が発生。続けて翌日には、三人の入院患者が変死体と同様に、全身に穴を穿たれ死亡する。犯人は蚊に刺され吸血鬼化した妊婦たちだった。

 病院を舞台にした直球勝負な感じの一編で、収録作のなかでも楽しめるエピソードのひとつだった。産卵を控えたメスだけが血を吸うという蚊の特徴を、出産間近の妊婦にうまく当てはめている。また妊婦たちは血を吸う際に、クリックボールという手動ドリルを用いて被害者に穴をあける。蚊の吸血法になぞらえてのことなんだろうけど、これがまた見るからに痛々しくて効果的だった。スプラッターものの好きな人には、単品でもおすすめできる好編。

 このエピソードは「吸血によって育った赤ん坊が生まれる日はもう間近です!!」(p.330)という桐絵のモノローグでひとまず幕を閉じて、次回へ続く。悪い予感しかしない。

 ※フキダシからの引用は、改行を調整しています。
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