つのだじろう『学園七不思議〈2〉』その1

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 つのだじろう『学園七不思議 赤尾学園編』(『学園七不思議 (2)』秋田書店 2002 秋田文庫 所収)

 舞台を「赤尾学園」に移して新たな「学園七不思議」のはじまり。今回もこれまでと同様に全7話で構成されている。
 作品全体の概観は以前の記事に書いてます↓

 つのだじろう『学園七不思議 第一話~第七話』
 つのだじろう『学園七不思議 青嵐学園編』

 主人公は典型的な巻き込まれキャラで「つのだフェイス」の「二条みずほ」。霊感が強く父親が「小清水PSI研究所」という看板を出してる同級生の「小清水さん」が脇を固めている。ほぼ「青嵐学園編」と同様のキャラクター配置だ。そんな主人公たちが通う「私立赤尾学園」は、地勢的特徴の乏しい地方都市の古い学校で、様々な怪談が語り伝えられている。

「その1 私は殺された」
「赤尾学園七不思議の〈1〉夕方東階段下の廊下をとおるとお腹が痛くなる!!」(p.20)「青嵐学園編」を踏襲しているのか、「赤尾学園編」の第1話も学校の階段にまつわる話だ。
「お腹が痛くなる」なんて聞くと、ほのぼのムードの子供っぽい話かと思うけど、7年前に発生した女生徒による殺人事件が背景にあるらしい。その現場がまさに「東階段下の廊下」だったのだ。今でも廊下には黒い血の染みが残っているという。この話では早々と小清水さんが階段下の怨霊に憑衣されている。「キエーッ」とか叫びながら暴れ回る霊媒の表現は著者の独壇場、大迫力かつ非常にスタイリッシュだ。また両手でナイフを握りしめたゴーストが、テニスウエアの女生徒の腹部を通り抜けるカット(p.19)があるのだが、その様子が真横からまるで「図」のように描かれているのがおもしろかった。

「その2 生きている机」
「赤尾学園七不思議の〈2〉1年C組教室の机には霊魂が座っている!」(p.48)定番中の定番、教室に残された「死者の机」の話。その机に座って霊に憑衣された生徒は、霊の生前の能力に影響されて一時的に成績が向上する。もちろん最後には強いしっぺ返しを受けるのだが、このあたりは「無印」の第1話「 君の名は…?」と同様の筋運びだ。どうも机に座りづらいとか、授業中に金縛り似合うとか、そういった細かい現象もしっかりと描かれ、定番の怪談が過不足なく表現されている。イメージシーンで「百太郎」がちらっと登場。

「その3 昼休みの猫」
「赤尾学園七不思議の〈3〉昼休みに校庭で猫がなく!」(p.85)←これだけ読むとちっとも怪奇現象っぽくないが、著者が得意とする「猫」にまつわる怪談だ。ところがこの話に関しては、少しばかり外してるように思う。なにしろ肝心の怪奇現象の発生が後半に入ってからで、その現象自体少々しょぼい。それじゃ前半はなにをやってるのかというと、「もし動物に口がきけたらなんていうと思う?」(p.69)「人間が動物を飼う……というのは、口のきけない動物を自分の奴隷にするのと同じだ!」(p.70)などと、変なスイッチが入ってしまった小清水さんのペット論に費やされているのだった。著者の作品にたびたび登場する突発的スピーチキャラが好きな人には楽しく読める一編。女子生徒が集団できゃいきゃい話してるうちに、どんどん思考がエスカレートしていく様子がうまく描かれている。

「その4 真冬のプール」
 これまで劇中に「赤尾学園七不思議の〈4〉〜」と書かれていたのがなくなって、フォーマットが変更されている。内容は真冬のプールで誰かが泳いでいるような水音が聞こえるというもの。それを調査していた用務員さんがプールに落ちて死亡、かつて水死した水泳部の女生徒の霊に引きずり込まれたらしい。これも定番の怪談だが、同様の話をこれまでいくつもこなしてきた著者だけに、手堅くまとめられている。驚いたのは用務員さんに続いて、みずほが霊査を頼んだ小清水さんがあっさり水死してしまうこと。この先どうするんだよ!

「その5 背番号4」
 ここにきて主人公のみずほが女子ソフトボール部の部員だったことが判明。しかもエース。この話は彼女が所属するソフト部に伝わる「背番号」のジンクスについての話だ。試合の勝敗を決する重要な場面には、かならず「背番号4」の選手が関わってくるという。実は試合前に「お稲荷さん」に詣でていたかどうかが重要らしいのだが……。「怪談」「机」「猫」「プール」ときて「狐」、学園七不思議のフルコースだ。数字のジンクスに「狐」を絡めたところが目新しい。さらにそこには死霊まで関わっている。前話で悲劇的な死を遂げた小清水さんについては、まったくノータッチなのが著者らしい。

「その6 書道室」
「この話は横浜市の高校生、勝美CHAN(ペンネーム)の体験した恐怖を脚色・補筆したものです!」(p.156)ではじまる著者の伝家の宝刀「読者からの手紙」回だ。宿泊すると怪奇現象に遭遇するという学園の和室で、みずほたちソフト部が合宿を行う。ラップ音からはじまり、窓に映る少女の顔、白いもや、それを目撃した者が呼吸困難に陥るなど、数々の怪奇現象が「手紙」の引用とともに手際よく紹介されている。劇中では教師からの暴力で死亡した少女の怨念が原因と説明される。全体にリアリティ重視の控えめな表現ながら、読み応えのある一編。

「その7 10番の靴箱」
「あたしの学校はどうしてこうおそろしい事件が次々に起こるんでしょう!」「それも……みんななぜか、あたしにからんでいる……」(p.186)と語るみずほだったが、その回想シーンに小清水さんの姿はない。封印したのか、みずほ……。
 三A10番の靴箱を使うと事故にあう、そんな噂通りの事故が実際に何件か続いた。その靴箱は以前不審な死に方をした女生徒のものだったという。彼女はいじめを苦にしていたらしいが、真相は分からない。冒頭の回想はどこへやら、みずほはあえてその靴箱を使用しはじめるのだった。この「赤尾学園編」の総括するかのように、一つのの場所に固執する怨念の恐怖を描いた一編。シンプルなストーリーだが、たびたび現われるぶさいくな女生徒の幽霊の回想が挿入され、物語に厚みを持たせている。噂そのものよりも、まったくあてのない手紙を待ち続けていたという、生前の彼女の行動の方が不気味。

 以上で「赤尾学園編」終了。UFOネタや学校外の出来事を扱っていた前回の「青嵐学園編」と比較すると、突飛さ控えめ、古典的で落ち着いた雰囲気だ。出来事も学園内に限定されている。定番の怪談をそのまま作品にするのではなく、随所に著者の工夫が見られて読み応えがあった。──以下、つのだじろう『学園七不思議〈2〉』その2に続く。

 ※フキダシからの引用は、改行、句読点を調整しています。



『学園七不思議〈2〉』
 秋田書店 2002 秋田文庫
 著者:つのだじろう

 ISBN-13:978-4-2531-7211-0
 ISBN-10:4-2531-7211-3
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Posted byserpent sea

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