クライヴ・バーカー『髑髏王』

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 クライヴ・バーカー(Clive Barker)著, 宮脇孝雄訳『髑髏王』("Rawhead Rex"『セルロイドの息子』集英社 1987 集英社文庫 血の本〈Ⅲ〉所収)

「ヘルレイザー・シリーズ」(1987〜)のようなホラー映画史に残るような作品をはじめ、著者が製作に携わった数々の映画には、小説家が趣味で作ったような作品とは一線を画す高品質なものが多い。そんななかにあって著者が脚本、原案を担当した『ロウヘッド・レックス』(1986)は、ガッカリな方向でひときわ異彩を放っている。確かに原作にはそのまんま映画化するには難しそうなところも多々あるのだが、とにかくメインの怪物「髑髏王」がしょぼい。ちっこい。そしてダサい。その昔レンタルのVHSで見たきりなんけど、未だに印象は鮮明なままだ。ゴアシーンと怪物だけしっかりやってくれば何の文句もないのに、そういった肝心のところが盛大にずっこけている。

 で、そんな迷作の原作がこの『髑髏王』。こっちはいいよ!

 イギリスの田舎の畑に封印されていた「髑髏王」が復活、行き当たりばったりに村人を殺し、子供を喰らう。村人はそれに対抗しようとするがまったく歯が立たない。「髑髏王」には致命的な弱点があるらしいのだが、今ではすっかり忘れ去られている……というのが大まかなストーリー。
 映画ではゴリラのマスクをかぶった変な人って感じだったけれど、原作の「髑髏王」は身長2.5メートルの巨漢で、人類の文明が生まれる以前に当地を支配していたという設定の禍神だ。殺戮の限りを尽くし、放尿、脱糞、射精となんでもありのキャラなんだけど、草原で月を見上げて物思いにふけるような感傷的な側面も持ち合わせている。「髑髏王」の内面を人間の登場人物並みに描写しているのがこの作品のユニークなところで、映像で表現するのは難しそうだけど、おかげで「髑髏王」のキャラはめっちゃ立ってる。

 また「髑髏王」に惨殺される登場人物(子供が多い)の描写からも強烈なインパクトを受けた。例えば「巨人はデニーのもとに素早く駆け寄ると、その愛しい顔を糞のように踏みつぶした」(p.96)「涙に濡れたアメリアの顔が、怪物の上下の歯で噛み砕かれている」(p.99)「怪物の喉に反吐を吐いた瞬間、少年の頭の上半分が噛みちぎられた」(p.138)などなど、死に直面した犠牲者の表情が端的に描写されていて、無常観を強く感じさせる。続けざまにどんどん人が死ぬわりに単調にならないのは、死にざまにバリエーションが多いからだろう。

 飽きのこない残酷描写や、自動車をずっと生き物だと思ってたりする「髑髏王」の絶妙なボケ具合、以前感想を書いた『丘に、町が』と同様に、伝奇ものっぽい要素を積極的に盛り込んで演出された物語のスケール感など、映画とは違って読み応え満点の作品。


 こっちも一応 ↓ パッケージで腕を振りあげてるのが「髑髏王」……

 ロウヘッド・レックス [DVD]』キングレコード 2003
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Posted byserpent sea

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