江戸川乱歩『電人M』

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 江戸川乱歩『電人M』(『江戸川乱歩推理文庫〈41〉仮面の恐怖王/電人M』講談社 1988 所収)

「少年探偵シリーズ」のなかでも目立ってキレのあるキレた作品。このシリーズの作品としては異例なテーマもさることながら、頻出するとんでもないビジュアルの数々に思わず吹き出しそうになる。なんか色々すごかった!

 まず冒頭、東京タワーにタコ型火星人が巻き付いている。後日ビラを撒きながら一般家庭を襲撃。←これ。
 都内にロビー・ザ・ロボット似の怪ロボットが出現、ビラを撒きながら飛び去る。←これ。

 このすごい状況、どう回収するのか心配してたんだけど、なぜか新たに二十面相一味がオープンさせた体感型アトラクションの宣伝ってことで完全に回収……できてない……けど、気にならない! 相変わらず二十面相の(乱歩の)目の付けどころは冴えている。当時(昭和35年)の子供はもとより、現在の子供と子供っぽい大人のわくわく感を刺激するアイテムを的確に押さえている。ちなみに怪ロボットと火星人がばら撒いていたビラには次のように書かれていた→「月世界旅行をしましょう」……火星じゃなくて、月!

 ストーリーはある博士が発明した原爆も水爆も凌ぐという兵器を手に入れようと、「電人M」を名乗る二十面相一味が暗躍するというもの。新兵器とか、二十面相の獲物としてはこれまでになかったものだ。いよいよ悪の秘密結社っぽくなってきた。ところが兵器の秘密は博士の脳内にしかない。「わしは、この発明を日本のためにしか使わない。いや、人類のためにしか使わない。この発明が悪者の手にはいったら、大変なことになる」(p.254)なんていってる。そこで博士の一人息子を誘拐するのだが……。

 今回は明智探偵、小林少年のほかに、ポケット小僧という小林少年の助手のようなキャラが大活躍する。その名の通り幼稚園生くらいに見える子供なのだが、その使えることといったら小林君の影が薄くなってしまうほどだ。ちびっ子の活躍は痛快だけど、例えば尾行などはあまりにも達人過ぎて、いつものハラハラ感がスポイルされてしまったのは少し残念だった。

 最初に書いたすごいシーンの数々は主に作品の前半に集中している。結構地味な展開もあるのだけれど、博士の新兵器の謎に引っぱられて最後まで楽しく読むことができた。苦悩する博士の姿は『ゴジラ』(1954)の芹沢博士を彷彿とさせる。本作が発表されたのは1960年だから、何らかの形で影響を受けているのかもしれない。味わい深い挿絵は吉田郁也によるもの。



『江戸川乱歩推理文庫〈41〉仮面の恐怖王/電人M』
 講談社 1988
 著者:江戸川乱歩
 解題:中島河太郎
 巻末エッセイ・乱歩と私:大谷羊太郎(作家)「乱歩が人生を変えた」

 収録作品
 『仮面の恐怖王
 『電人M

 ISBN-13:978-4-0619-5241-6
 ISBN-10:4-0619-5241-2
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Posted byserpent sea

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