香山滋『ゴジラ』

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 香山滋『ゴジラ』(『香山滋全集〈14〉魔空要塞』三一書房 1996 所収)

 CSの日本映画専門チャンネルで、ゴジラ生誕60年&7月のハリウッド版公開記念として「総力特集・ゴジラ」(※1)がはじまった。毎月「5」のつく日にHDリマスター版を2本ずつ、全30作を1年かけて放送するらしい。ナイス企画だ。この前は『ゴジラ』(1954)と、アンギラスの出てくる『ゴジラの逆襲』(1955)をやってた。個人的には『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』(1966)『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(1967)あたりが好きで、初期の作品はちゃんと見たことがなかったので、この機会にしっかり見てみようと思う。

 エッセイやインタビューを除く香山滋のゴジラ関連の作品には、まず映画のための『G作戦検討用台本』、ラジオドラマの台本をもとにした『怪獣ゴジラ』、それと本作、児童向けのノベライズ『ゴジラ』(※2)の3作があって、すべて「香山滋全集」で読むことができる。
 全集以外で今手元で確認できるものとしては『G作戦検討用台本』が出版芸術社の『怪獣総進撃 怪獣小説全集Ⅰ』に、『ゴジラ』が奇想天外社の『ゴジラ』と奇想天外ノヴェルスの『ゴジラ/ゴジラの逆襲』に収録されている。どの本も比較的手に入りやすいと思う。それぞれ読者層に合わせた工夫がされていて、『怪獣総進撃 怪獣小説全集Ⅰ』には関連スチル写真とポスター、奇想天外社の『ゴジラ』には関連スチル写真と竹内博による児童向けの解説「香山滋とゴジラ」「「ゴジラ」映画・作品リスト」、奇想天外ノヴェルスには竹内博による詳細な解説「映画「ゴジラ」と香山滋」と、ミステリー作家の山村正夫による「失われた世界(ロストワールド)への郷愁 - 探偵文壇における香山滋氏の業績 -」が附載されている。なかでも奇想天外ノヴェルスの「映画「ゴジラ」と香山滋」は読み応えがあった。様々な資料を駆使して香山滋の人となりや、映画のストーリー作りを依頼された経緯、『ゴジラ』映画に対する思いを詳らかにしている。

 超有名な作品なのであらすじは書かないが、映画公開後に書かれた本作はおおむね映画版をトレースしている。キーとなる台詞もほとんどそのままだ。ただし児童向けのノベライズということで相応の改変が少なからずある。目立ったところでは恋愛要素がざっくり削られて、尾形の出番が減ったかわりに新吉少年の活躍が増えている。それから中盤、各国の調査団が来日するタイミングで、ゴジラの東京襲撃を歓迎する「東京ゴジラ団」なる結社が暗躍している。今読むと乱歩の少年探偵シリーズにでも出てきそうなノリだが、これも著者の年少の読者に対するサービス精神の現れだろう。もちろん大筋に影響することなくフェードアウトしていく。
 ゴジラの登場するシーンは、さすがに映画の強烈なインパクトとは比ぶべくもないが、断末魔のゴジラの激しいリアクションは大迫力の描写で映像に勝るとも劣らない。

 以下映画の話。初代ゴジラが核兵器、戦争、空襲、天災などなど、禍々しいものの表象であることはよく知られているが、今回映画を見返してみて一番強く感じたのは、菊地秀行がインタビューで語っていた「夜そのものが襲ってくる」ような怖ろしさだった。通常兵器ではまず無理ゲー、大戸島のお神楽の方がよっぽど効き目がありそうな感じ。超常的すぎる。
 それから芹沢への強烈な死ね死ね圧力が辛かった。恵美子に裏切られ、絶望に打ちひしがれている芹沢に、TVから流れる鎮魂歌(?)が追い打ちをかける場面は、美しくも残酷な名シーンだ。この「オキシジェン・デストロイヤー」の使用を巡る芹沢の逡巡や尾形の立ち位置は『怪獣ゴジラ』ではかなり手を入れられていて、感情移入していると凹んでしまいそうな理不尽さは相当程度解消されているのだが、映画の恵美子はさすがに鈍感すぎるように思う。芹沢まじ気の毒。

 予想通りだったのかどうかはさて置き、大ヒットした映画『ゴジラ』。当時地方では観客をさばくために交通整理の警察官までが動員されたという。三島由紀夫がこっそり見にいってたなんて逸話も残されている。
 真っ暗なスクリーンに「賛助 海上保安庁」と浮かび、東宝マーク、ドーン!ドーン!という轟音。咆哮とともにスクロールしてくる『ゴジラ』のタイトル。そしてあのオープニングテーマが流れはじめる。公開当時、真っ暗な映画館でこのオープニングを見た観客の気持ちはどんなだったのだろう。今見ても怖いのだから、きっとすごく驚いたに違いない。想像すると楽しい。


 ※1. 日本映画専門チャンネルの「総力特集・ゴジラ」特設サイト ↓ 当時のポスターや各作品のあらすじが載ってます。
 http://www.nihon-eiga.com/osusume/godzilla/

 ※2.『ゴジラ 東京編』と表記される場合がある。「大阪編」は『ゴジラの逆襲』のノベライズ。
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