楳図かずお『ママがこわい』

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 楳図かずお『ママがこわい』(『恐怖劇場〈2〉』小学館 1992 スーパー・ビジュアル・コミックス 所収)

 子供のころ蛇を飼ってたことがある。細い体で指に巻き付いて、かぷっと指先に噛みついてくるのが、蛇的には攻撃なんだろうけど、とてもかわいらしかった。今はなくしてしまったけれど、ウソかほんとか「マムシの骨」を貰って大切にしてたこともある。魔除けなんだそうだ。そんなわけで今でも蛇はとくに怖くない。どっちかっていうと好きな方なのだが、蛇系の怪物怪人は別。とくに人間と混ざると気持ち悪いったらない。
 トラウマネタをいくつかあげると、まず児童書にスチール写真やイラストで登場していたハマー映画の『蛇女の脅怖』(1966)の蛇女。不快この上ない秀逸なデザインで、これは今見ても充分に怖い。それからたまたまTVでやってたのを見た『怪奇! 吸血人間スネーク』(1973)の蛇男も嫌だった。恋人の父親のマッドサイエンティストに、むりやり蛇人間にされたあげく見世物小屋で晒されるナイスガイの話で、怖いというよりもキツい映画だった。ツチノコ状態でクークー鳴く蛇男の造形は見事な出来映えだったが、主人公が気の毒すぎて子供ながらまじ凹んだ。

 前振りが長くなってしまったが、楳図かずお『ママがこわい』について。著者の初期の作品には、嫌な感じで人間と蛇が混ざった多くのヘビ女が登場する。本書に収録された三部作『ママがこわい』『まだらの少女』『へび少女』をはじめ、『ヘビおばさん』『口が耳までさける時』『うろこの顔』、映画にもなった『蛇娘と白髪魔』など、ちょっと思いつくだけでも結構な数のヘビ女作品がある。たまにホラーマンガ読むよって人なら、きっとどれかは読んだことがあると思う。なかでも『ママがこわい』は古典にしてエポックな超有名作だ。

 ストーリーは母親とヘビ女が入れ替わったことに気付いた主人公の弓子が、それを周囲の大人に訴えてもまるで相手にされず、どんどん孤立していくというもの。シンプルながら緊張感のある展開で、弓子だけに正体をチラ見せするヘビ女が厭らしい。もちろん弓子がヘビ女に執拗に追いかけ回されるといったシーンもたっぷりとある。
 著者によるとこの時期の作品は、表面上の恐怖のドラマツルギーを強調して、感覚的に怖いと思うものばかりを寄せ集めた作り方をしていたという。その条件にもっとも適したものの一つが、少女が一番安心できるはずの場所である家庭に、ずるりと侵入してくるヘビ女だったのだろう。クラシックなかわいい絵柄は、雑誌側からの要請に基づくものだったらしい。

 著者はまた「変身」に関して、子供から大人になることも「変身」のようなもので、それはとても不気味なことだと思うと語っている。興味深い見解だ。そう思って改めて読み返すと、母親に化けたヘビ女に対する弓子の疑念や怖れは、子供が大人に抱く感情そのもののようで、このあたりが「ヘビ女」というキャラクターが、蛇に対する生理的な嫌悪感を越えて、新たな普遍性を獲得しえた決定要因となっているように思う。それにしても『ママがこわい』って、素晴らしいタイトルだな。


 ※最初にあげた映画は、以前はなかなか見ることができなかった(多分)のだけれど、今では手軽に見れるようになりました。

『蛇女の脅怖』映画自体は児童書を卒業してずいぶんと経ってから、海外版のLDで初めて見た。ここしばらくは『ハマー・フィルム怪奇コレクション DVD-BOX 恐怖の美女編』(←amazonへのリンクです)に収録されてるものを見てます。この単品で発売されたものとはジャケットが違うだけで中身は一緒のはず(未確認)。やっぱ怖い↓

 

『怪奇! 吸血人間スネーク』ジャケットの蛇と人間が嫌な感じで混ざってる怪物が主人公。胴体がツチノコ状にひらべったくなっている。まじめな映画だけど、今見てもちょっと凹む↓

 
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Posted byserpent sea

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