小原愼司『地球戦争〈3〉』

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 小原愼司『地球戦争〈3〉』小学館 2014 ビッグ スピリッツ コミックス スペシャル

国家転覆ノ/陰謀ヲ巡ラス/野心家ニ/惹カレテユク少年。/女王ニ忠誠ヲ/誓ウ少女。/誰モガ、大人ヘノ/階段ヲ駆ケ足デ/登リ始メル…


 以上は帯のあおりより。前巻で登場した野心家の商人グレイブは女王の軍隊を殲滅し「階級のない社会」、理想的な「新世界」の到来を語る。オリバーとアリス、そしてもと孤児院の子供たちは、そんなグレイブの庇護下にあった。グレイブに憧れ「こんな男になりたい」と願うオリバーだったが、その言動を見聞きするうちに、言いようのない違和感を感じはじめ、仲間たちと連れ立ってグレイブから離れる決心をする。

 前巻の感想で「人類対人類の争い、タイトル通りの『地球戦争』に、利用される異星人という構図になっていくのだろうか」って書いたけど、ストーリーは今のところ子供たちのドラマが中心となっている。異星人の出番や戦闘シーンは少なめで、そういうのを期待していると少し物足りないかもしれない。そのかわり子供たちに強い影響力を持つやっかいな大人、グレイブに見え隠れする子供っぽい全能感や酷薄さに、彼に憧れながらも徐々に覚めていくオリバーの心情が綿密に描かれている。オリバーは状況を自分なりに捉え、考えることのできる柔軟なキャラだ。劇中「オリバーの女版」なんていわれているアリスは、むしろここまでまったくぶれることのない、オリバーとは正反対のキャラに見える。

 結局子供たちはグレイブの庇護から離脱することを選んだのだが、この先の展開はどうなっていくのだろう。グレイブから離れるということは、人類対人類、もしくは人類対異星人というストーリーの中心から遠ざかっていくような気がするのだけれど。すでに子供たちだけでどうにかできるような状況じゃないし。それと女王はどこでなにしてるんだ。すごく気になる。

 表紙のイラストはこれまでの怪しい絵柄とは少し印象の異なる爽やかなもの。もちろん冒険活劇っぽい雰囲気は上々で、透明感のあるピンクとブルーの彩色が美しい。本編の銅版画風の作画も健在で、p32-33のグレイブとレディたちのいかがわしさ満点のシーン、p162-163の謎の巨大生物の登場シーンはとくに素晴らしかった。早く続きが読みたい。



『地球戦争〈3〉』
 小学館 2014 ビッグ スピリッツ コミックス スペシャル
 著者:小原愼司

 ISBN-13:978-4-0918-6069-9
 ISBN-10:4-0918-6069-9
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