黒沼健『謎と秘境物語』

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 黒沼健『謎と秘境物語』新潮社 1959 異色読物シリーズ

 新潮社の「異色読物シリーズ」の一冊。どれもおもしろいから毎回似たようなことを書いているけど、本書はこれまでのなかでも、とくに読み応えがあった。200ページほどの本ながら、二段組みで活字も小さいから結構な情報量だ。さらに嬉しいことに本書にはUMA関連のエピソードが3編、そしてシリーズ屈指の恐怖譚「トコロシの怪異」が収録されている。

 収録されているのは「呪われたダイヤ」「悪魔の目を持った男」「消えた外人部隊兵」「白蛇の呪い」「トコロシの怪異」「傷つける湖の怪物」「死人回生教団」「現代に生きる怪異」「メデューサ号の筏」「死の人間爆弾」「海の財宝地図」「ヤスチランの秘法」「幻のナヴァホ銀鉱」「砂漠の黄金都市」「アマゾナスの王」「マフィアの誓約」「禁断の大瀑布」の17編。世界各国の埋蔵金にまつわる話が多い。

 UMA関連の話は「白蛇の呪い」「傷つける湖の怪物」「アマゾナスの王」の3編。「白蛇の呪い」はベンガルで実際に捕獲された白いボアにまつわる怪談。この全身真っ白で青い目をしたボアは、現地で神聖視されていたという。「アマゾナスの王」は巨大アナコンダをフィルムに収めるべくアマゾンに赴いた探検隊の話。このとき撮影された記録映画は1954年に公開されている。製作はスウェーデンの「Svenska AB Nordisk Tonefilm」、監督は「Torgny Anderberg」、タイトルはズバリ『アナコンダ』("Anaconda" 1954)。97年の映画『アナコンダ』はこの記録映画へのオマージュなのかな。

「傷つける湖の怪物」はマレーシアの湖に棲息する謎の古代爬虫類「タセク・ベラの怪物」を求めて、第二次世界大戦終了後も現地にとどまり、未開のジャングルに踏み入ったイギリス人民族学者の話で、そのまんま映画化できそうなほど上質な秘境ものだった。この話の舞台となったタセク・ベラ(Tasek Bera, タセック・ベラ, ベラ湖)は、ラムサール条約に登録されたマレーシア最大の湿地(38000ha)で、現在は観光で行けるほど開けているのだけれど、当時は原住民すら近付かない夢のような秘境中の秘境だったらしい。この「タセク・ベラの怪物」はマイナーな未確認生物ながら、近年のUMA関連本でもしっかり紹介されていて、まだしばらくは現役で行けそうな感じ。

「現代に生きる怪異」はこのシリーズのエピソードとしては変わり種の、著者の実体験に基づく「実話怪談」だった。幽霊を見た話や虫の知らせのほか、有名な羽田空港の鳥居にまつわる話と、羽田繋がりで著者原作の映画『大怪獣バラン』(1958)についても触れられている。
 最初に書いたシリーズ屈指の恐怖譚「トコロシの怪異」は、アフリカの「畑の悪魔」「トコロシ」(Tokoloshi)に少女が憑衣される話。地味なポルターガイストから徐々にエスカレートしていく怪奇現象、狂ったように脅える少女の様子が異様な迫力で描写された傑作エピソードだ。まじで怖かった。試しに「トコロシ」(←Google検索です)で検索してみたところ、驚いたことに現在でもアフリカの各地に現れては、殺人から下着泥棒まで様々な悪事を働いてる様子。一連の記事によると、なんとなく夢魔、淫魔の類いなのかなとも思う。

 といった感じで黒沼健の「異色読物シリーズ」のなかでも、おすすめの一冊です。


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Posted byserpent sea

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