安藤君平『「超」怖い話』

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 安藤君平編著『「超」怖い話』勁文社 1993 勁文社文庫21 Q-013

 現在も調子よく刊行が続いている竹書房文庫の「「超」怖い話・シリーズ」。その前身は勁文社から新書判と文庫版を合わせて、全11冊が刊行されていた。(「超」怖い話←詳しくはwiki等参照)。本書は文庫版の最初の一冊で、1991年に刊行された新書判を再編集したものだ(4話削られている)。「当然ながら、本書に収録された話は、すべて実話です」(p.5)というコンセプトはこの段階で確立されている。

 現行の竹書房版とざっくり比較すると、全体になんとなくゆるいというか、アットホームな雰囲気で、それが味わい深い魅力となっている。収録されたエピソードには不思議系の話が多く、どぎつさは感じられない。取材して集めたというより、たまたま耳に入った話をまとめたって感じで、体験者も著者自身、もしくは著者の身近な人物であることが多い。また著者がエピソードについての考察を展開していることも、現行のシリーズではほとんどみられなくなった趣向だ。そんな中から興味深いエピソードを二つほど↓

「第三章 日常に潜む間の空間」より「電柱から生えた老婆」
 こうした実話怪談集を読んでいると、妙な場所から妙な体勢で「生えている」人騒がせな、しかし出る方の立場になって考えると、なんとなく不憫な感じがしないでもない幽霊の話をたまに見かけることがある。ただ「目撃した!」って話が多いから、なぜそんなところに出るハメになったのかは想像するしかないのだが、当然状況が不条理なほどおもしろいし印象に残る。このエピソードでは土砂降りの雨の中、タイトル通りの場所に老婆が生えている。問題はその容貌。これはかなり怖い。

「第三章 日常に潜む間の空間」より「顔だけは見たくない!」
 北軽井沢のロッジで女性作家が体験した話。夜、薄汚れた風呂場のバスタブから、この世ならざるものが這い出してくる。まずバスタブの青い蓋が「ずるっ」と横に滑り、そこから痩せこけた腕が、そして裸の肩が、真っ黒な髪の毛が現れる。体験者は歯を磨きながら、その一部始終を洗面台の鏡越しに眺めている……。
 これは怖い。幽霊がじわじわと姿をあらわす様子が克明に、映像的に描写されている。全52話中、最恐のエピソードだ。

 この2編はシンプルな怖さという点で、現行のシリーズに比肩すると思う。ほかにも興味深い話がいくつも収録されているが、すべてがクライマックスの一点に収束するように、無駄をとことん削り落とした現行シリーズに慣れてしまっていると、いささか枝葉が多いように感じられる(このあたりの変遷は、Jホラー→『呪怨』→「呪いのビデオ」の流れを彷彿とさせる)。「著者による考察」なんていうのも枝葉の一つだろう。しかし「枝葉」の部分がまったく活かされてないかというとそうでもない。
 例えば「第四章 物にまつわる話」の「マリア様のミイラ」などは「枝葉」のみで構成されたようなエピソードだ。怪異が起こってるのかどうかさえ、はっきりとしない。それでもミッション系の学校で、小学生が「マリア様のミイラ」を探すというネタは非常に魅力的だ。ちょっとした伝奇物の端緒のようで、興味深く読むことができた。
 また上記のようなアットホームさを醸し出しているのも、この「枝葉」の部分なのかもしれないが、仲間内で怪談話をするような気が置けない雰囲気は決して欠点ではないと思う。

 ……とまぁ、だらだら書いてしまったけれど「え、どゆこと?」って感じの不思議な話が多くて楽しかった。電車で読むにはもってこいの本だ。それと怖がりの人にも。



『「超」怖い話』
 勁文社 1993 勁文社文庫21 Q-013
 編著者:安藤君平

 ISBN-13:978-4-7669-1793-2
 ISBN-10:4-7669-1793-6


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Posted byserpent sea

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