伊藤潤二『うずまき 第7話 びっくり箱』

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 伊藤潤二『うずまき 第7話 びっくり箱』(『うずまき』小学館 2000 ビッグ コミックス ワイド 所収)

 ホラーマンガとしては真っ当な仕上がりながら『うずまき』のなかにあると、少々異質な雰囲気の一編。ゾンビものである。ショートカットになって可愛さ倍増の桐絵が、同級生の男にストーキング気味につきまとわれる。

 男の名は山口君。他人を驚かせることを生き甲斐にしているらしく「びっくり箱」なんて呼ばれている。そんな山口君が桐絵の目の前で自動車に巻き込まれて死亡する。桐絵を驚かそうとした末の事故だった。車の車体が体に食い込んで、とんでもない状態だったという。土葬にされた山口君だったが、相当腐敗しつつも棺桶を突き破って再登場。びょーんびょーんと飛び跳ねながら、愛しい桐絵に襲いかかる。

 全体に「うずまき」分が薄いように感じられるが、今回のストーリーのキモである、山口君の人を驚かせて注目を集めたいという欲求は、劇中で関連づけられてはないけど、前話の関野さんと同様にうずまきの影響によるものだろう。また山口君の死体が土葬になった経緯も、火葬場の煙が渦を巻く現象を踏まえたものだし、山口君の死体を稼動させていたバネもうずまきだ。
 ゾンビ山口君のくだりは、内臓がはみだしたり、足がちぎれたり、腐敗のために暴れながら崩れていく死体のインパクトがやたらに強い。描写にも非常に力が入っている。これがうずまき云々の印象を弱めている一因な気もするが、ゾンビものとしては上々のクオリティで、ゾンビファンには納得の作品になっていると思う。

 それからこのエピソードの地味ながら嬉しいポイントは「君みたいにきれいなコを彼女にして、みんなをアッと言わせたいんだ」(p.209)って感じで、はじめて劇中で桐絵の容姿について言及されているという点だった。まぁこれは生前の山口君の台詞だから色々あれだけど、どーみてもかわいのに誰も触れないから前々から気になっていたのだ。予想通り綺麗らしくてなにより。こんな感じの学園ものっぽいエピソードは、状況を悪化させながらもう少し続く。


 ※フキダシからの引用は、改行を調整しています。


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Posted byserpent sea

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