山岸凉子『ゆうれい談』

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 山岸凉子『ゆうれい談』(『山岸凉子全集〈17〉ゆうれい談』角川書店 1986 あすかコミックス・スペシャル 所収)

 著者が体験したり、漫画家仲間から聞いた「実際にあった」とか「ほんとにあった」とか「あなたが体験した」系の怖い話を、軽妙なタッチで紹介している。著者はまん丸い顔のデフォルメ姿で登場。ワンポイントのヘアクリップと、怖がりなくせに聞きたがりなところが可愛らしい。で、そんな著者に色々な怪談を聞かせる漫画家仲間のメンツがすごい。すごすぎて、ちょっと引いてしまうぐらいすごい。次の一節からもその一端をかいま見ることができると思う↓

さて同じく予感が当たるといえば大島弓子さん/これ 去年の暮れ彼女の家へナナエタンと訪ねた時のこと(p.45)


 ……お分かりいただけただろうか? 「ナナエタン」とは言わずと知れた心霊マンガの巨匠「ささやななえこ」(旧名:ささやななえ)。この三人が一同に会していること自体が、奇跡的というか、すごすぎて怖い。これでなにも起こらなかったら、そっちの方が不思議なくらいだ。このほかにも萩尾望都、竹宮恵子、もりたじゅん(旧姓:森田)、みやわき心太郎などが賑やかに登場して、著者をさんざん怖がらせている。

 取り扱われている怪異は、国分寺の真夜中の子供、着物姿の幽霊、柳の精霊、予知、死ぬ時の夢などなど。因縁や前後関係の希薄な、ただ目撃しただけというものが多いのだが、ここでも卓抜した心霊描写は冴え渡っている。著者と仲間のコミカルなやり取りに気を抜いているところに、突然シリアスな幽霊のコマが差し挟まれて、思わずぞくりとさせられてしまう。なかでも著者自身の体験談に登場する幽霊の様子は怖い。

 九州を旅行中の著者が「Mさんの親戚の家」の仏間で、正座をする幽霊を目撃する。顔を手ぬぐいで覆い、右手を軽く上げ、指先はなにかを力なく指差している。そんな姿が暗闇にはっきりと浮かんで見えたのだという。以前『あやかしの館』(←前の記事へのリンクです)の感想でも書いたけど、著者がジャパニーズホラーに与えた影響は絶大で、この奇妙なポーズで静止した幽霊の表現も、映画『リング』の「呪いのビデオ」に登場する「指差す男」を筆頭に、様々な作品の幽霊の表現に影響を及ぼしていると思う。

 さて、そもそもこの『ゆうれい談』という作品は、深夜眠気覚ましのためにアシスタントたちと交わした怪談を、そのノリもそのままにマンガ化したものだ。作品の最後に著者は読者にこう呼びかける。

皆さんの中にもこのような体験をなさっていらっしゃる方/我々の睡魔を追い払う手段として/ぜひお手紙を下さるようお願いして本編を終わらせていただきます(p102)


 怖がりの聞きたがりの著者によるこの「お願い」が、いかなる事態を招いたかというと……以下『読者からのゆうれい談』(←関連記事へのリンクです)に続く。

 ※フキダシからの引用は、改行を調整しています。


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Posted byserpent sea

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