クライヴ・バーカー『丘に、町が』

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 クライヴ・バーカー(Clive Barker)著, 宮脇孝雄訳『丘に、町が』("In the Hills,the Cities,"『ミッドナイト・ミートトレイン 真夜中の人肉列車』集英社 1987 集英社文庫 血の本〈1〉所収)

 フォルクスワーゲンで旅行中のゲイのカップルが、たまたま訪れたユーゴスラヴィアの田舎の町でとんでもない事件に巻き込まれた。二人が訪れた町とその近隣の姉妹町は、10年に一度ごとにある特殊な方法で戦闘を行っているという。住人が組み体操のように巨大なヒトガタを形成して、そのヒトガタ同士で戦闘を行うのだ。古来からの祭祀のようなものらしい。今回の戦闘で1体のヒトガタに参加した住人の総数は38765人……。二人の旅人の眼前に、雲を衝く巨人が現れた。

 ホラ話でもこのくらいのスケールになると爽快感を感じる。イメージソースとしては「あとがき」にもあるようにゴヤの(助手の)作とされる『巨人』("The Colossus")あたりなのだろうけど、とにかくビジュアル的な訴求力が半端ない作品だった。

 巨人の描写はかなり緻密で読み応え満点。そうでないと住人の体を集めて、巨人の「骨格、筋肉、骨、目、鼻、歯、男女の体でそのすべてをつくる」(p.276)なんて発想を作品として成立できなそうだ。
 雲を衝くような巨人である。当然この重力下でそんな体形が維持できるわけがない。だから各部を構成している住人はどんどん潰れて死んでいく。なかでも足の裏なんかに配属された奴は悲惨この上ない。「足をつくってる連中は、誰もが屈強な大男ばかりだった。死んでいる者も多かった。仲間の体重に押しつぶされた血まみれの死体が、ジグソーパズルのように足の裏にへばりついている」(p.288)なんてことになっている。数万人の人々による法悦と恐怖の絶叫、赤い川のように流出する血液。まさに地獄絵図だ。

 また主人公のゲイの二人の好対照な性格付けも気が利いていておもしろい。一人は政治的に偏狭な思想の持ち主で、どこかで聞きかじったようなご高説をドライブの間中垂れている。もう一人は行く先々の文化遺産が醸しだす夢の世界に浸れれば満足、という乙女チックなハートの持ち主。二人のうちどちらが「町」に祝福されるのか……。

 著者は映画「ヘルレイザー シリーズ」(1987〜)をはじめ、『ロウヘッド・レックス』(1986)や、クローネンバーグが変な袋をかぶって活躍する『ミディアン』(1990)など、多くの映画の原案、監督、脚本家として知られている。この方面での活躍ぶりを見ると、もともと超ビジュアル先行型の作家なのだろう。CG全盛の現在、この作品なんてとくに映画に向いていると思う。モザイクのように人体で構成される巨人、……ものすごい絵面だ。でっかい怪物や怪獣が出てくる小説大好きって人にはすごくおすすめ。


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