H・G・ウエルズ『モロー博士の島』

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 H・G・ウエルズ(Herbert George Wells)著, 橋本槙矩訳『モロー博士の島』("The Island of Dr. Moreau" 橋本槙矩, 鈴木万里訳『モロー博士の島 他九篇』岩波書店 1993 岩波文庫 所収)

 超有名な作品。色々な翻訳で各社から出ているし、『獣人島』(1933)『ドクター・モローの島』(1977)『D.N.A./ドクター・モローの島』(1996)と、三度も映画化されている。最初の『獣人島』は見たことがないんだけど、『ドクター・モローの島』と『D.N.A./ドクター・モローの島』はしっかり見た。映画の出来はさて置き、獣人のメイクがなぁ……って印象だった。決して不出来なわけじゃないんだけど、なんかピンとこない。やっぱ『ハウリング』(1981)や『狼男アメリカン』(1981)みたいに、メリメリメリって変形しないと燃えられないのかもしれない。あと『ドクター・モリスの島/フィッシュマン』(1979)ってイタリアの亜流映画もあったけど、こっちは本家を凌ぐほどの良作だったように記憶している。

 ……そんな獣人が原作ではどんな風に描かれているのかというと、まずはごく簡単にストーリーから↓

 漂流していた主人公「プレンディック」は、多くの動物を乗せた船に救助される。船の目的地は「名もない無人島」だという。その島に上陸した主人公は、希代のマッド・サイエンティスト「モロー博士」による、動物を人間に改造する実験を目の当たりにする。島には多くの「獣人」が人間社会をモデルに生活を営んでいたが、彼らの畏怖の対象としていたモロー博士の殺害をきっかけに、人間らしさを失い暴走をはじめる……。

 古典中の古典の古典的なストーリーだが、この恐ろしい物語のD.N.A.は現在もなお様々な作品に受け継がれている。劇中、色々なタイプの獣人が登場するが、どれも生々しく奇怪で、「獣人」と聞いて連想される「体形はほぼ人間で頭部や体表が獣」(『ストライク・ザ・ブラッド』の「獣人」とか)という形態ではなく、より病的に怪物チックに描写されている。博士の角笛に呼ばれて島中の獣人が集まってくるシーンなんて、まさに地獄の魔物の群れって感じ。
 シンプルな「馬→人間」という改造にとどまらず、「馬+犀→人間」なんて実験をしているあたりに、博士の狂いっぷりがよく表れていると思う。また博士は過去に「動物人間の他にあるものを造った」こともあるらしく、完成前に逃げ出したそいつ(本郷ライダーみたいだ)は「手足のない恐ろしい形相の生物で、蛇のように地面を這って進む」(p.280)という。なんだかものすごい怪物のようで、回想で語られるだけなのが惜しい。

 この作品には寝る前にぼけーっと読んでいても分かるくらいはっきりと、進化論や文明論、科学研究をめぐる思想的な要素が散りばめられている。物語の最後でロンドンに戻ったプレンディックは、目にする人々がみな「いつかは退化して獣性を露にするのではないか」(p.330)という不安を抱いている。このあたりがどうやら主要テーマらしいのだけれど、そこはあまり注意を払わずに怪物がわらわら出てくるモンスター小説として読んだ。解説によるとこの作品が発表された当時、批評家たちはこの作品を一種の「ショッカー(扇情小説)」として批判したらしい。今となっては、え、ショッカーで悪いの? って感じだけど……。そういったジャンルのことはさて置き、一世紀以上前に書かれたとは思えないほど、色褪せない楽しさの詰まった作品だと思う。


 ドクター・モローの島 [DVD]』20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2008


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Posted byserpent sea

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Re: 相互リンクのお願い

>>楠村さん
コメントありがとうございます!

現在、自分の趣味の範囲外のブログを見て回る余裕が無いため
相互リンクのご依頼はお断りしています。ご了承ください。

もちろん当ブログに関しては自由にリンクしていただいて結構です、
というかありがとうございます!

2013/12/16 (Mon) 01:14 | EDIT | REPLY |   
楠村  
相互リンクのお願い

突然のご連絡、失礼いたします。

「求職者支援訓練」というサイトを運営している楠村と申します。

今回、こちらのサイトを拝見させて頂き、
ぜひ相互リンクをお願いしたくご連絡させていただきました。

先に以下サイトの右サイドバーに勝手ながらリンクを貼らせていただきました。
http://xn--p1u50at75cv8k.com/link/

また、メインカラムの方で、RSSも掲載させて頂いております。

ご検討の程、宜しくお願いいたします。

楠村

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楠村
infoo@xn--p1u50at75cv8k.com

求職者支援訓練
http://xn--p1u50at75cv8k.com/
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2013/12/13 (Fri) 18:27 | EDIT | REPLY |   

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