つのだじろう『学園七不思議〈1〉』その2

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 つのだじろう『学園七不思議 青嵐学園編』(『学園七不思議〈1〉』秋田書店 2002 秋田文庫 所収)

 ──『学園七不思議〈1〉』その1から続く。

『学園七不思議』「無印」に続いて、ホラーマンガ雑誌『サスペリア』に掲載された「青嵐学園編」。目の前には太平洋、背後には切り立った崖のような山が迫る町の学校、「私立青嵐学園」が舞台となっている。どうやら伊豆周辺がモデルとなっているらしいが、ちょうど『うずまき』(←前の記事へのリンクです)の「黒渦町」と同じような土地柄だ。設定を生かした印象的な海辺のシーンも多く、海の怪談も取りあげられている。また校舎の裏手の丘には町の共同墓地がある。

 舞台が特定の学園に決められたことによって、この「青嵐学園編」からはシリーズを通しての主人公が設定されることになった。主人公は「一条みずき」、自覚はしてないがかなり強い霊能力を持つ。オカルト関連への好奇心が強く、よく霊的な厄介ごとに巻き込まれている。それともうひとり、みずきにアドバイスをする同級生の霊感少女「月影明子」、霊媒の祖母の能力を受け継いで、非常に強い霊能力を持つ。

「その1 13非常階段」段数が変化するという非常階段の話。転落事故が多発している。また第1話目から地味なネタを……って感じだが、これがなかなか興味深い展開を見せる。階段には本来何の異常も無かったのだが、階段を危険だとか不吉だとか感じた生徒たちのマイナスの気が蓄積し、それを取り込むために魔界から「魔物」が集まってきているらしい。校舎の片隅の小さな階段を舞台にした、やけに壮大なエピソードだ。主人公みずきはさっそく魔物に操られて階段から転落、入院している。

「その2 理科実験室」少女の手首の標本が保存されているという理科実験室で、その手首を捜す少女の幽霊にまたしても主人公のみずきが遭遇する。腕の切断面をあらわにした少女の幽霊は、これまでのもやもやを払拭するような素晴らしい出来映え。全体に地に足の着いた演出で、突飛な面白さはないけれど、怪談っぽい雰囲気上々の好エピソード。

「その3 机文字の怪」全体に地に足の着いた演出で〜なんて書いた直後にすごいのがきた。有名な「机「9」文字事件」(詳しくはwiki等参照)をベースにした話で、なにからなにまで「謎」とされた事件に対する著者独自の解釈といえるかもしれない。
 机文字はUFOを召還し、宇宙人にさらわれた友人を取り戻すために並べられたという。彼岸っぽい光のなかで、涙を流しながら喜び合う生徒たちを描いたラストシーンは、複雑な思いとともに長らく心に残る印象的な場面だ。ぶっ飛び具合はシリーズ随一。本筋とは関係のないところだが、UFOから人の残骸が投下される場面が残酷。

「その4 猫足の墓」アブダクションの次は、なんとも土着的な墓相についての話。この振り幅の大きさが素晴らしい。舞台となるのは校舎の裏手の共同墓地。墓地の管理人の男が墓相の蘊蓄と自らの体験談を語る。男の体験談自体は「骨をかじる男」の怪談のバリエーションだが、箪笥の上で母親の遺骨をかじる少女の姿はなかなかの迫力だった。つのだフェィスじゃないのが惜しい。
 余談だが子供のころ祖母から「猫足の墓」の縁起の悪さを聞いたことがある。〜家はこれが原因で途絶えたとかなんとか。当時は先っぽが尖った円筒形の墓石が大好きだったのだが、あれは「無縫塔」や「卵塔」と呼ばれるお坊さん専用の墓石らしい。無性にあの先っぽを触りたくて、だっこしてもらった覚えがある。

「その5 保健室の血痕」保健室の診察用のベッドに寝ると、シーツの下から血液が染み出す幻覚を見るらしい。その原因を主人公二人が探るというストーリー。ジトっとした血生臭さはいい感じなのだが、途中から視点が保健の先生に移ってしまうため、なんとなく散漫な印象を受けた。ここでもみずきが霊媒的な能力を発揮している。

「その6 人喰い岩」海水浴場のはずれの岩場にある「人喰い岩」にまつわる怪談。「人喰い岩」は一見潮溜まりのような岩場の穴で、底無しとも、落ちたら吸込まれるともいわれている。今回の犠牲者はみずきの親戚の可奈ちゃん。出てきたと思ったら、すぐ行方不明になってしまう。
 この「人喰い岩」、設定からして怖いんだけど、みずきを穴に引きずり込もうとする地縛霊の姿がまた怖ろしい。海辺の町という設定が上手く生かされた好エピソードだ。

「その7 青色のピアノ」用具置き場に放置されている青いピアノは、弾くと鍵盤の隙間から血が滲んでくるという。もとの持ち主は事故で片腕をなくし、それを苦に自殺した生徒らしい。今回も懲りずに憑依されてしまうみずきだったが……。
 みずきの不幸は霊能力のせいではなく、家族の霊に対する無理解こそが原因である、という風にも読めるエピソード。「青嵐学園編」の最終話ながら、実にあっさりとした印象の話だった。

『学園七不思議〈1〉』その1で書いたようにこの「青嵐学園編」には、掲載誌のカラーに合わせようという試みなのだろう、さまざまな少女マンガ的な手法が導入されている。しかしそれらが上手く機能して、微妙な心情や時間経過などを表現できているかというと、正直かなり微妙。さらに著者自身の筆が主人公ふたりの顔のほかにはほぼ入ってないため、少女マンガ調の画面に「つのだフェィス」だけを貼付けたような、なんとも形容し難いアートワークが顕現している。

 そんな特徴的な作画の作品だが、著者らしい本格的な怪談がいくつも含まれていて、全体としては読み応えのある作品となっている。それからこの第1巻の解説は稲川淳二によるもの。解説そっちのけで自分の持ちネタを長々と披露していて、こっちも読み応えあり。「怪談には訓話的なメッセージが込められていて、著者の作品には同じ匂いがある」という指摘はさすが。


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