つのだじろう『学園七不思議〈1〉』その1

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 つのだじろう『学園七不思議 第一話~第七話』(『学園七不思議〈1〉』秋田書店 2002 秋田文庫 所収)

 この『学園七不思議 第一話~第七話』は、ホラーマンガ雑誌『サスペリア』に1986年から1987年にかけて掲載されている。続いて「青嵐学園編」「赤尾学園編」「黄泉学園編」がタイトルの通りきっちり7話ずつ掲載されるが、今回の最初の7話は各話ごとに舞台となる学校が異なるため「~学園編」というサブタイが付けられていない。ここでは便宜的に「無印」とする。

 雑誌の読者層を考慮して作品全体のトーンはやや明るめで軽め、えぐさエロさは極力排除されている。各話の主人公は「つのだフェイス」こそなってはいるものの、著者の筆が全く入ってないようなページも散見され、アシスタントによる少女マンガタッチの作画が目立つ。とくに「青嵐学園編」以降はコマの使い方から何から、従来の著者の作品とはかなり異なった印象を受ける。
 そんな感じでビジュアル的には残念な点も少なくはないが、著者独特のアクの強さはしっかり健在なので、ファンの人は試しに手にとってみて欲しい。随時「読者からの手紙」も導入されていて実話怪談っぽさを補強している。

「第一話 君の名は…?」女子高の美術室に出て、生徒に「君の名は…?」と問いかけるハンサムな美術教師の幽霊の話。この幽霊に取り憑かれた生徒は、デッサン力がプロ並みに跳ね上がるらしい。なぜか顔と木炭を持った手だけというスタイルで現れ、そのまんまの格好で「デッサンはやるのかね?」とか普通に話してる幽霊がユニーク。全体を通して大人しめなエピソードで、とくにショックなシーンもなくやや低調な滑り出し。様子見って感じなのかな。

「第二話 給食の栄養」給食のなかに入った白髪、それを口にした女子中学生が極度の拒食症になるという話。2話めにして気持ち悪いのきた。食卓を囲みながら食物に含まれる有毒物質について、いきなりアジりはじめる親父が登場する。彼は拒食症になった娘の父親で、実に著者のキャラらしいキャラだ。「まさかっそんなっ!! 信じられないっ!!」(p.46)という娘に対して「いや…これは事実だ/テレビのまじめなドキュメンタリー番組で放映していた」(p.46)と平然と答える父親。母親は「毒性の強い薬を使用している現場も画面にハッキリ出ていた/うたがうスキのない真実よ」(p.46)と追い討ちをかける。娘の拒食症の原因って……。
 ……それはさて置き、水質汚染を訴える幽霊というのも面白いし(『現代民話考』のなかの河川の汚染を訴える河童の話を彷彿とさせる ※1)、それが妄想かどうか分からない演出もよかった。生理的に訴えるような話に良作が多い著者ならではの好編。

「第三話 黒板になにかが!?」いじめを苦にして自殺した女生徒が、いじめた生徒のイニシャル「M」を遺書に残した。クラスメートが疑心暗鬼に陥るなか、授業中の黒板に「M」の文字が浮かびあがる。実は自殺した生徒をいじめていたのは、クラス委員をつとめる優等生の少女だった。自殺した生徒の怨霊が彼女を襲う。シンプルな筋立ての小品。黒板が上手く機能してないような。

「第四話 花ことばの怪」花嫌いの花屋の娘が学校の花壇を荒らし、喉に花びらを詰め込まれて窒息死する。まずなんといっても扉をぴらっとめくったところの見開きのページのインパクトがすごい。画面いっぱいの花の絵と、ツインテールでしましまニーソを着用した「つのだフェイス」の女の子の図だ。イリヤスフィールあたりならどはまりしそうな絵面だが、やっぱ「つのだフェイス」はおどろおどろしい画面に最適化されているようだ。
 そんな感じで絵面ばかりに気圧されてしまうが、内容も西洋風の花の妖精(ミ・フェラリオタイプ)が出てきたりして、かなりユニーク。コティングリー妖精事件(詳しくはwiki等参照)の例の写真を正物としているのはご愛嬌。

「第五話 地底からの声」赤ん坊と女性のすすり泣く声が聞こえる体育館の舞台。文化祭を控えてその原因を調査していた用務員が行方不明になった。原因は不明のままである。そして文化祭当日、演劇を見に集まった観客の前に、赤ん坊を抱いたもんぺ姿の女の霊がはっきりと出現する。体育館の下には戦時中の防空壕が残されていたのだ。観客を前にして、恨みつらみを滔々と述べる幽霊はあれだけど(観客には劇の一部だと思われてたし)、怪談っぽい雰囲気は上々。

「第六話 一番奥の扉」タイトルから何となく分かるようにトイレの怪談。トイレの壁面に人の顔の形をしたシミが浮かぶ。霊能者によると、このトイレのコンクリートには、殺害され細かく砕かれた老婆の死体が混入しているという。主人公の女生徒(自称霊能力あり)は、まんまとその老婆の怨霊に憑衣されてしまう。
 これまでも何度となく描かれてきた霊能者と怨霊のバトル。トイレに行ってあっと驚くってくだりが何度も繰り返されるため、やや平板な印象は拭えないがオチはなかなかのもの。トイレの怪談といっても便器から手が出てくるような古典的なものではなくひとひねりされている。ページ数の少ない学校の怪談に職業霊能者を絡めるのは大変そう。

「第七話 狐火」このエピソードから、コマ割りがより少女マンガ風に変化している。タイトルは「狐火」だが、それ以外にも「コックリさん」「狐憑き」といったおキツネさま関連の怪異が諸々詰め込まれた短編。「キェーッ!!」と奇声をあげながらカッターを振り回す女生徒が登場する。著者が得意とするテーマだけあって、そつなくまとめられている。

 以上が「無印」の「七不思議」。印象としては著者がこれまで発表してきた多くの作品のなかから、とくに心霊関係のネタをピックアップして少女向けに置き換えてるって感じ。──以下、つのだじろう『学園七不思議〈1〉』その2に続く。


 ※本作はアニメ化(『ハイスクールミステリー学園七不思議』)もされてますが、しっかり見たことがないのでノータッチです。
 ※フキダシからの引用は、改行を調整しています。

 ※1. 松谷みよ子著『現代民話考〈1〉河童・天狗・神かくし』筑摩書房 2003 ちくま文庫


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