楳図かずお『神の左手悪魔の右手 HORROR-2 消えた消しゴム』

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 楳図かずお『神の左手悪魔の右手 HORROR-2 消えた消しゴム』(『神の左手悪魔の右手〈2〉』小学館 1987 ビッグコミックス 所収)

「想」たちの担任の「みどり先生」は優しい。でも本当に優しいかどうかは、死んでからでないと分からない。人は死ぬと正体を現すって「大輔」ちゃんが言ってた。だからみんなで先生を殺したのに、全然正体を現わさない。仕方なく先生の死体は学校の裏のマンションの建設現場へ……。
 みんなで先生を埋めた帰り道、想は先生の死体とともに、筆箱を埋めてしまったことに気付いた。一人で筆箱を取りに戻った想。筆箱は見つかったけれど、筆箱の中の大切な消しゴムが一つ残らず無くなっている。消しゴムは「守護霊」として想が作ったものだった。
 翌日、想たちの教室の教壇に立ったのは、みどり先生だった。何事もなかったかのように授業をはじめる。それから、一緒に先生を埋めた友達が、ひとりずつ行方不明になっていく。

 やってもーた感満点の幕開けから、なし崩し的に、行き当たりばったりに物語は進行する。どこに向かっているのか、落としどころが全く予想できない展開に、劇中の子供たちと一緒にハラハラしてしまう。納得できない、理解できない出来事が次々に起こる。どうしても説明不足に感じられるところもある。それは本作がほぼ全編、子供(想)目線で描かれているからだと思う。想が気を失っているあいだのほんの数ページを除いて、読者には想が得た以外の情報を最後まで与えられない。すぐ近くで「すごいこと」が起こってるらしいのに、全然認識できない。それが怖ろしい。
 なかでもとくに怖いシーンが二つある。一つめはもちろん1話目のラスト、みどり先生がぶら下がってしまうところ。もう一つは最終話の最後のあたりの「見られたくなかったのーっ!! 見られたくなかったのよーっ!!」という先生の絶叫。ほんとわけが分からない。怖い。

 改めて感じたことだけど、子供らしい行き当たりばったり具合といい、「ぬーめらうーめら」「どんどろ」「でんでろ」「がんがろ」「べんべろ」という、たった今思いつきましたって感じの安易なネーミングといい、著者の子供心への共鳴と表現は、素晴らしいを通り越してとんでもないことになっている。シリーズ中最も短く、最も得体の知れない話ながら、強烈に惹かれるエピソードだ。


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Posted byserpent sea

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