作者不詳『快楽の生贄たち』

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 作者不詳, 行方未知訳『快楽の生贄たち』("A Man with a Maid")富士見書房 1979 富士見ロマン文庫 -36- 1-6

 前に感想を書いた作者不詳のヴィクトリアン官能小説『閉ざされた部屋』(←前の記事へのリンクです)の続編。本作はシリーズ4部作のうちの2作目にあたる。前作と同様に作者不詳ってことになってるけど、『閉ざされた部屋』には「悲劇」、本作には「喜劇」という「銘」が付けられ、対になって刊行されたというから、少なくともこの2作は同じ著者によるもののようだ。

 前作から四ヶ月が経っている。アリスは性的に開花したばかりか、もともとあった同性愛的な傾向にブーストがかかったらしく、主人公(一応)のジャック以上の積極性で新たな生贄を物色している。今回の犠牲者は四人。小間使いのファニー、アリスの大親友で22才の未亡人コニー、ジャックと娘をくっ付けようとする四十がらみの未亡人ベティ夫人とその愛娘モリー18才。
 大まかにファニー編、コニー編、ベティ夫人+モリー編って感じで、それぞれにちょうど1/3ずつが充てられている。まるまる一冊アリスに費やした前作と比べると、人数が増えた分ストーリが多少複雑に……なってない。というかストーリーは無い。件の監禁部屋に次々に犠牲者を「誘い込み→陵辱する」の繰り返しだ。ほぼ全編が陵辱シーンに費やされているのも、エロいけどエグくならない明るい雰囲気も前作と同じ。

 それでも登場人物が増えたことによって、カップリングが多彩になったのは前巻との大きな違いだ。より読者を退屈させない構成になっていると思う。各場面ごとの主な組み合わせをあげてみると「ジャック×アリス」「(ジャック+アリス)×ファニー」「アリス×ファニー」「ジャック×ファニー」「(ジャック+アリス+ファニー)×コニー」「(ジャック+アリス+ファニー+コニー)×(ベティ夫人+モリー)」……という自由すぎる状況。アリスがもの凄くがんばってるのがよく分かる。なんかめちゃくちゃなことになってるんだけど、相変わらず事後に不都合は一切生じない。
 それから「拘束してのくすぐり」がメインだった前作に比べて、プレイ内容にも当然バリエーションが増えている。女性同士のからみをはじめ、女性同士、母娘を向かい合わせて互いに視姦させ合う羞恥プレイなど。多人数を非常に上手く使っているが、「くすぐり」は相対的に減っているので「くすぐりいいね!」って人にはちょっと物足りないかもしれない。

 前作との違いといえば、なんか嫌な感じの女性だったアリスが、有り難いことに本作ではちょびっと可愛くなってるところ。なかでもこの↓台詞が印象的だった。舌足らずに甘える感じの訳文が素晴らしい。

ねえ、ジャック、おねがいがあるの。わたしね、自分の小さな部屋で、いつも見慣れたものに囲まれ、わたし自身のベッドで抱かれてみたいの。今夜寄ってくださらない」(p.171)



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