伊藤潤二『うずまき 第5話 ねじれた人びと』

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 伊藤潤二『うずまき 第5話 ねじれた人びと』(『うずまき』小学館 2000 ビッグ コミックス ワイド 所収)

「黒渦町には昔から、長屋の廃墟のようなものが点在しています。町のなかにひっそり隠れるように残っているものもあれば、二棟が並んでいるもの。あるいは町の周辺の荒地で、今にも崩れ落ちそうになっているものまで様々です。」(p.140)そんな長屋が舞台の第5話。
 主な登場人物は今回ずっと傍観しているだけの桐絵の他、桐絵の幼なじみで長屋に暮らしている和典君と、その恋人で同じく長屋の住人の依子さん。この二人、激しく愛し合ってるのだけれど、同じ長屋の端と端に暮らす家族同士の仲が異常に悪い。『ビッグバンセオリー』のハワードの母親みたいに始終怒鳴り合っている。もちろん和典君と依子さんの交際には大反対。さんざん悩んだあげく、二人は駆け落ちを決意する。

 怒鳴り合う登場人物のハイテンションさとは裏腹な、「長屋」「駆け落ち」という昭和っぽい、どことなくのどかなノリと、驚愕のラストシーンとの落差に唖然とする実に著者らしいエピソード。途中に蛇のシークエンスを挿入するなど、一般誌向けということで、ほかの驚異的な短編群と比べるとやや親切設計になってるようにも感じられるが、絡み付いた蛇のヌメヌメギラギラした質感のいやらしさと一時の静かな間は、作品の効果的なアクセントになっている。またラストシーンが白昼の浜辺というのも、2時間サスペンスみたいでおもしろい。

 前に書いたように、著者はこの作品を構想するにあたって、最初にまずうずまき状の長い長屋を思いついたというから、いよいよ本題に入ったって感じ。

 ※フキダシからの引用は、改行を調整しています。


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