M・R・ジェイムズ『秦皮の木』

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 M・R・ジェイムズ(Montague Rhodes James)著, 紀田順一郎訳『秦皮の木』("The Ash-Tree"『M・R・ジェイムズ傑作集』東京創元社 1978 創元推理文庫 所収)

「魔女」と聞いて最初にぱっと思い浮かぶイメージは『オズの魔法使い』(1939)の「西の悪い魔女」のような鷲鼻の老婆形態の魔女だ。少し考えれば色々な魔女(キキとか)がいるのに、子供のころに接した童話の影響だと思うが、常に老婆形態一強でわれながら面白味がない。これが「魔女狩り」となると、なぜかエロいイメージがまとわりついてくるのは、藤子・F・不二雄の『T・Pぼん』や「ジャンヌ・ダルク」の影響だろうか。

 ……本作はそんな魔女狩り(非エロ)で処刑された魔女をモチーフにした、本格的なオカルト短編小説。著者の作品はハズレなく面白いが、この作品も例に漏れず、魔女の執念というか怨念を異様な迫力で描き出している。ストーリーは結構シンプルで、処刑された魔女が、裁判に際して彼女に不利な証言をした家系に、長期間にわたって祟るというもの。死者も出る。決まって屋敷のある一室で眠った者が死亡するのだ。そしてその部屋の窓の外には、トネリコの木が植えられている。
 作中で経過する時間は、魔女の死から呪いの終焉まで数十年に及んでいる。その期間に生じた気味の悪い、しかし一見関連性の薄い出来事が淡々と記述される。それぞれのエピソードは短く、暗示的ではあるものの必要最低限の描写しかされない。最後の最後になって、はじめて事件の全貌が明らかになるという構成だ。

 とくに印象的な、気味の悪いシーンが二カ所ある。ひとつは狂える悪鬼の表情で「あの邸にはお客があるだろうよ」と呟いた、魔女の死に様。意味はよく分からないが、それが呪いの言葉であるらしいことがじわっと伝わってくる。
 もうひとつは月明りのもとで目撃された奇妙な光景。上記のトネリコの木を駆けのぼったり、降りたりしている生き物が目撃される。この「駆けのぼったり、降りたり」という、意味のあるのか無いのか分からない反復が気持ち悪い。
 実話怪談などでも、同じことを過剰に繰り返すタイプの怪異が出てくるけど、やっぱり同じように気味が悪い。ただ例えば投身自殺をずっと繰り返すような幽霊はあまり怖くない。悲惨だなぁとは思うけど。でもずっとうなずいてるような幽霊は怖い。気持ち悪い。わけが分からないものは怖い。

 そんなわけが分からない出来事のタネ明かしがしっかりされるから、気味の悪いものが色々詰まっているわりに、読後感はすっきりしている。オカルトっぽい雰囲気満点の作品。


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Posted byserpent sea

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