楳図かずお『神の左手悪魔の右手 HORROR-1 錆びたハサミ』

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 楳図かずお『神の左手悪魔の右手 HORROR-1 錆びたハサミ〈1〉』(『神の左手悪魔の右手〈1〉』小学館 1987 ビッグコミックス 所収)
 楳図かずお『神の左手悪魔の右手 HORROR-1 錆びたハサミ〈2〉』(『神の左手悪魔の右手〈2〉』小学館 1987 ビッグコミックス 所収)

『神の左手悪魔の右手』は傑作SFホラー『わたしは真悟』に続いて、雑誌『ビッグコミックスピリッツ』に連載された著者のオカルト系作品の集大成である。中学生の姉「泉」と小学生の弟「想」の周辺で発生する奇怪な出来事が、連作の形で描かれている。エピソードは全5話(+特別編「おふだ」このビッグコミックスには未収録)。各話のタイトルは「HORROR-1 錆びたハサミ」「HORROR-2 消えた消しゴム」「HORROR-3 女王蜘蛛の舌」「HORROR-4 黒い絵本」「HORROR-5 影亡者」。それぞれのエピソードにストーリー上の関連は見られない。

 洪水で押し流されてきた建造物(地下室)のなかで、泉が錆びたハサミを拾ったことから物語は始まる。ハサミを拾って以来、泉の挙動がおかしい。なにかに取り憑かれてような雰囲気だ。そんなとき泉のクラスには、急死した担任に代わって若くハンサムな教師が赴任してくるという。その話を聞いた弟の想は、悪夢を見た。全身をケロイドのような傷跡に覆われた怪人の夢だ。
 翌日、泉のクラスでは新任の教師の歓迎会が執り行われた。泉が花束を贈る。その花束の中にはあの錆びたハサミ。激しく動揺した教師の口が一瞬裂けて見えたかと思うと、泉が突然、物凄い勢いで泥を吐きはじめた。悪臭を放つ汚物のような大量の泥が教室を埋め尽くしていく。

 想が夢で見たり、無意識に感じていた「怖いこと」がとんでもない形で顕在化する。「オエーッ!!」とか「グエー!!」とか奇声をあげながら、排泄物のような質感の泥をげろげろ吐き出す泉の姿は、シャレにならない凄まじさで、うっかり読むとトラウマ必至。この後泥を吐き終えた泉は、次に骸骨や玩具や三輪車などを体内から吐き続ける。

 この「HORROR-1 錆びたハサミ」は、著者の代表作『赤んぼう少女(のろいの館)』系のエピソードで、それに様々なオカルト的な要素がぶち込まれている。体の内側から突き出したハサミが両方の眼球を潰すシーンから始まって、怖ろしい場面が矢継ぎ早に続くから、正直、体調が悪いときは避けた方がよさそうなほどの傑作だ。もちろん血飛沫やグロ描写にある程度の耐性がないと、体調が良くてもきついかもしれない。作画は最高に黒く、精密で美しい。

 著者はインタビュー集『恐怖への招待』のなかで、恐怖について「極端なもの、逸脱したもの、ゆがんだもの、これらはみんな怖い」(※)と語っていて、本作はまさにその見本のように、徹底的に極端で、逸脱していて、歪んでいる。有名な作品なので今更って気もするが、グロ大丈夫って人には凄くおすすめ。


 ※楳図かずお『恐怖への招待 世界の神秘と交信するホラー・オデッセイ』河出書房新社 1996 河出文庫 p.81


  楳図かずお『神の左手悪魔の右手〈2〉』小学館 1987 ビッグコミックス


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Posted byserpent sea

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