山口直樹『幻のツチノコを捕獲せよ!!』

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 山口直樹著, 並木伸一郎監修『幻のツチノコを捕獲せよ!!』学習研究社 1989 MU SUPER MYSTERY BOOKS

 空前のツチノコブームから十数年後の1988年、奈良県で開催された賞金付きのツチノコイベントをきっかけに、再びツチノコブームが起きた。当時の記事を改めて見返してみると、マスコミや地方自治体によって形成されたブームだったことがよく分かる。それが第二次ツチノコブームの特徴だったといえるかもしれない。本書はそんなブームが早々と下火になりはじめた1989年の7月ごろに刊行されている。
「ツチノコ目撃を報ずる新聞記者もテレビ局のレポーターも、姿形程度しかツチノコを知らないのだ。/これでは、せっかくツチノコが再び活発に活動をしはじめても、ツチノコを捕獲し、その存在を実証することなどできはしない。〔中略〕そこで、ツチノコの正しい知識をまとめてみようと、今回筆を取った次第なのである」(p.4-5)。こうしたコンセプトに貫かれた本書は、現地調査と聞き取り、全国の生息地を県単位で網羅して、「MU SUPER MYSTERY BOOKS」のなかでも屈指の好著となった。内容は以下のように五つの章で構成されている。

「第1章 ツチノコ3大出没地域と最新目撃事件を追う」
 奈良県下北山村、岐阜県白川村、広島県上下町における目撃情報とツチノコ探索イベントの状況を、地図や写真、目撃者のスケッチを用いて詳細にレポートしている。「ツチノコ探索イベント」とは、いうまでもなく自治体主催の村おこしイベントで、こんなに大勢が大騒ぎしながら押し掛けてるところに、ツチノコに限らず何らかの動物がのこのこ出てくるとは思えない。とはいえこうしたイベントが催されると、それを報じた新聞や広報の読者からの目撃情報が増えるのだそうだ。これらの地域ではツチノコにそれぞれ100万円以上の懸賞金を懸けている。

「第2章 数多くの目撃情報からツチノコの特徴を検証」
 古くは記紀の「ノヅチ」から矢口高雄の『バチヘビ』までといった、ツチノコに関する様々な文献から、その特徴や習性をピックアップして実際の目撃情報と照合している。地味ながらおもしろい試みだ。ただそれぞれの文献によって、ツチノコのイメージにばらつきがありすぎて、ひとつのイメージに統合するのは難しそう。この章ではほかに、全国各地に伝わるツチノコの異名についても言及されている。

「第3章 謎のベールに包まれたツチノコの正体を暴く」
 前章で導き出したツチノコ像を、世界中のめぼしい現生生物と比較し、その正体に迫る。著者はツチノコを何らかの生物の誤認とする説には否定的で、新種の蛇か未知の化石種の生き残りである可能性が高いという。そしてツチノコの絶滅を食い止めるには、「一日も早く捕獲し、その生態を調べ、適切な保護政策を行うしかない」(p.148)としている。

「第4章 ツチノコはここにいる・県別探索地徹底ガイド」
 本書の目玉企画がこの章。「ツチノコ捕獲候補地マップ」や写真、スケッチ、目撃情報を用いて北海道を除く各都府県ごとの棲息地域を詳細に解説している。まずは自分の住んでる地域をチェック、馴染みのある地名が出てくるとちょっと嬉しい。他の都府県についても、地名だけでは全然ピンと来なくても、こうして地図になっていると分かりやすいしおもしろい。中部、近畿地方に目撃情報が集中しているようだ。

「第5章 めざせ100万円、究極の捕獲方法はこれだ!!」
 ツチノコイベントの紹介→文献のチェック→正体について類推→棲息域の確認ときて、実際に捕まえに行ってみよう!というのがこの最終章の趣旨。服装や装備から山歩きの注意事項にまで言及されていて、昆虫採集とかバート・ウォッチングとか、あの辺の本の雰囲気といえば分かりやすいと思う。「クマに出会ったとき」なんて項目もある。巻末には雑誌『ムー』の懸賞金についての要項と、「ツチノコ目撃報告書」、ツチノコの「関係団体連絡先一覧」が付いている。

 本書は第一次ツチノコブームのマスト、山本素石の『逃げろツチノコ』を念頭に書かれているようだ。タイトルからも分かるように、ツチノコを絶滅から救うという題目に対して、「一日も早く捕獲すべき」という本書と「逃げろツチノコ」では、真逆の方向を示唆しているのだけれど、内容については『逃げろツチノコ』に負う所が大きく、「参考文献」としても一番最初に記載されている。『逃げろツチノコ』からエッセイの要素を省き、ツチノコの捕獲に特化させたのが本書といった感じ。マスコミや地方自治体が主導し「懸賞金」が前面に押し出された、第二次ツチノコブームの空気をよく伝えている。


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