伊藤潤二『うずまき 第4話 窯変』

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 伊藤潤二『うずまき 第4話 窯変』(『うずまき』小学館 2000 ビッグ コミックス ワイド 所収)

 秀一の両親の葬儀以来、火葬場の煙が上空で渦を巻くようになった。空を覆うようなでっかいうずまきは、しばらくすると桐絵の家のそばのトンボ池に吸込まれるようにして消える。そんなトンボ池の泥を用いて桐絵の父親が作った陶器は、窯のなかでことごとく捻れ、うずまきの紋様で覆われていた。「窯変」(ようへん)が生じたのだ。桐絵は焼成中の窯の炎のなかに、絶叫しながら苦しみもがくように変形していく陶器を見た。

 確かこの作品を読むまで「窯変」という言葉を知らなかったように思う。劇中では手際良く説明されているが、陶磁器を焼く際に、窯のなかで起こる変色や変形を「窯変」という。色の変化はなんとなく想像がつくけれど、ときにはびっくりするほどぐにゃっと変形することもあるらしい。

 異常巻アンモナイトのように「窯変」した陶器のインパクトが強烈すぎて、思わずスルーしてしまいそうになるけれど、家屋への被害はほぼ秀一によるもので、今回ははじめて「うずまき」による犠牲者の出ない話だ。桐絵の父親がイカレてしまってるような気がしないでもないが、これは著者の作品に登場する科学者やアーティスト特有のノリだと思う。「黒渦町の怪奇な日常」って感じの一編。
 トンボ池に関するくだりは第2話の冒頭部分の繰り返しで、今後しばらく描かれないトンボ池を印象付けている。

「窯変」を扱った怪奇系の作品としては、岡本綺堂の怪談集『青蛙堂鬼談』の中にズバリ「窯変」という作品がある。人を焼き殺した窯で焼いた瓦が、どれも人の顔や手足の形に「窯変」するという話で、もしかするとこの第4話のヒントになっているかもしれない。


 青蛙堂鬼談 岡本綺堂読物集二』中公文庫


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Posted byserpent sea

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