伊藤潤二『うずまき 第3話 傷跡』

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 伊藤潤二『うずまき 第3話 傷跡』(『うずまき』小学館 2000 ビッグ コミックス ワイド 所収)

「うずまきマニア」で一通り世界観や人間関係が説明されたところで、早速著者らしい話がきた。スペクタクルな話ももちろん面白いけど、個人的にはこの話のように個人にフォーカスしたエピソードの方がより好ましい。黒谷さんかわいいし。

 その黒谷さんがこのエピソードの主役。桐絵のクラスメートで、最初に仲良くなった友人だとか。ショートボブで色白(そう)で、桐絵と比べてちょっとツリ目の正統派伊藤潤二美人だ。当然モテる。しかし彼女がモテるのには秘密があるらしい。彼女の額にある三日月型の小さな傷、それが男子を引きつけるのだという。やがて三日月型の傷の両端が伸びてうずまき状になり、強力な吸引力を発揮すると、男子の視線どころか黒谷さん自身まで吸込みはじめるのだった。

 第1話の感想でも書いたけど、著者はほんと出し惜しみをしない。今回は顔面を吸収されつつある黒谷さんの絵が凄い。まず思いつかないだろって気もするが、思いついたからには全部描く! って感じ。グロテスクなだけじゃなくて、どこまでも黒谷さんが綺麗なのが素晴らしい。

 このエピソードの三日月型の傷の両端が伸びて渦になって……という凄いアイデアは、この先もっと大規模に展開されることになる。この第3話を作品そのものの梗概と捉えても大ハズレではないように思う。著者はまず最初にうずまき状の長屋の着想を得たというから、このエピソードはそこから遡るように発想されたのだろう。一見行き当たりばったりに見えて、しっかりと構成が練られているところが憎い。


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Posted byserpent sea

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