作者不詳『閉ざされた部屋』

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 作者不詳, 行方未知訳『閉ざされた部屋』("A Man with a Maid")富士見書房 1978 富士見ロマン文庫 -14- 1-3

 作者不詳のヴィクトリアン官能小説。解説には「秘密文学の傑作」とある。書きたいことだけ書いた、なんか文句ある? と言わんばかりの素晴らしい構成で、突っ込みどころ満載の作品。カバーのイラストは金子國義、挿絵は片山健。

 アリスという女性に手ひどく捨てられた主人公ジャックが復讐を企てる。その方法はロンドン市内に監禁のための部屋を用意し、そこに彼女を呼び寄せるというシンプルなものだった。彼が用意した部屋は元々私的な精神病棟として建てられたもので、完全防音のうえ、患者を拘束するための金具や滑車が備え付けられていた。

 全部で10章のうちの最初の章は、監禁部屋の準備と仕掛けの説明に費やされている。そして残りの9章は、ひたすら監禁したアリスに対する拷問、陵辱に終始するという、怖ろしくも欲望に忠実な展開をみせる。なにかにつけて理屈を捏ねる主人公は、冷酷、執拗で、自らの行いにこれっぽっちの罪悪感も抱いていない。

 ……と、こんなふうに書くと陰惨で残酷なエロ小説っぽいが、拷問といっても流血するような残酷描写はないし(スカトロっぽい描写もない)、とんでもない状況なのに「死んじゃうかも」とか「殺されるかも」なんて危機感が皆無なので、作品全体のトーンはやけに明るい。すべて主人公の思い通りに易々とコトが運ぶから、きっとめちゃくちゃなことをやっても大丈夫なんだろうなぁ、などと思っていたら本当に大丈夫なのだ。ご都合ってレベルじゃない。

 アリスは25歳になる高慢なきつい女で、かなりいいところのお嬢さまらしい。男性経験はない。そんな彼女に施される拷問はというと……、主に指と鳥の羽根を用いた「くすぐり」。本作は珍しい(多分)「くすぐり」をメインにした作品なのだ。
 後半、予想通りアリスがデレてきたりはするんだけど、↓こんな感じの描写が9章続く。9ページじゃなくて9章。

まず羽根の先端をアリスの谷間の下方に当てがった。そして珊瑚色をした繊細なあたりを、とりわけ静かにやさしく上から下へ、下から上へ愛撫し始めた。アリスの顔は胸元へうなだれていた。〔中略〕だが、恥部に羽根が触れるや否や、その頭は苦悶の余りか後ろに抛げやられ、声を限りに悲鳴をたてながら、あられもなく全身をよじり、引きつらせたのだった(p.89)


 ずーっとこんな感じなので、途中でうっかり本を閉じてしまったりすると、どこまで読んだか分からなくなってしまう。「くすぐる→休憩→くすぐる→休憩→くすぐる……」のエンドレスだ。ひとつひとつの描写はかなりエロい。エロいけど、エグくはない。ギリギリのところで下品にならないところも本作の特徴の一つだが、これは作品全体の明るい雰囲気とともに、エロ小説としてはマイナスなのかもしれない。

 本作はよっぽど評判が良かったらしく、次々に続編が書かれて最終的には四部作になっている。作者不詳ってことでシリーズのすべてが同じ著者の筆によるものとも限らないが、シンプルな面白さという点では本作が一番だ。個人的にはアリスのキャラに今一つ魅力を感じられないのが残念だった。でも「くすぐりいいね!」って人にはすごくおすすめ。


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Posted byserpent sea

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