アンガス・ホール『ネッシーと雪男』

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 アンガス・ホール(Anguas Hall)著, 桐谷四郎訳『ネッシーと雪男』("Monsters and Mythic Beaste") 学習研究社 1976 超常世界への挑戦シリーズ〈3〉

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 オカルト専門誌『ムー』の創刊に先立って、学研は「超常世界への挑戦シリーズ」と銘打った全12巻の叢書を刊行した。シリーズを通しての監修は『アウトサイダー』("The Outsider")『オカルト』("THE OCCULT")のコリン・ウィルソンとSF作家のクリストファー・エバンズ。英国で刊行されていたシリーズを翻訳出版したものだった。
 この「超常世界への挑戦シリーズ」のラインナップは、『〈1〉驚異の超能力者たち』『〈2〉戦慄の怪奇人間』『〈4〉幽霊とポルターガイスト』『〈5〉心霊の世界』『〈6〉大予言と謎』『〈7〉魔術と占いの神秘』『〈8〉宇宙よりの来訪者』『〈9〉神秘と怪奇』『〈10〉テレパシーと念力』『〈11〉魔女の恐怖』『〈12〉謎の大陸』というもので、本書はその第3巻。伝説の怪物を博物学っぽい切り口で紹介していて、ケレン味の強いUMA本というより、今なら平凡社あたりからしっかりした装丁で出そうな雰囲気の本である。初期のまだブレーキが効いてた頃の『ムー』には、多少その雰囲気と、グラフィカルな紙面構成が引継がれているように思う(『科学』と『学習』の影響の方がでかいような気がしないでもない)。

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 本書は八つの章で構成されていて、↑こんな感じの写真や絵画などがメインの美しい紙面が特徴。また本文、キャプションの漢字には丁寧にルビが振られている。それぞれの章をざっと紹介する。

「1 神話と人間の心に生き続けるドラゴン」
 古代から現代に至る「ドラゴン」の伝説と、東西のドラゴン観の違いについて。数多く引用されている中世のヨーロッパの騎士vsドラゴンの絵画やタペストリーが美しい。日本の龍については「日本のドラゴンの話は、西欧とよく似ている。日本のドラゴンは年に一度、処女のいけにえを要求した」(p.20)とある。

「2 人魚と一角獣」
 前章のドラゴン同様、各地各時代の「人魚」の伝説について。20世紀の中頃まではかなり明確な目撃情報もあるらしい。水から飛び出して船のデッキに上がってくると、しっぽを使ってまっすぐ立ったという。まるでむろみさんだ。
「一角獣」の場合は「角」というはっきりした証拠があったものの、18世紀にはすでに実在が疑問視されていて、宗教的な象徴のひとつと考えられていたようだ。また人魚と一角獣は、ともに性的な意味合いを持っている点で共通しているという。有名な『貴婦人と一角獣』("La Dame à la licorne"『機動戦士ガンダムUC』に出てきたアレ)が引用されている。

「3 深海の怪物たち」
 この章からいよいよUMA編、タコ、イカ、「シーサーペント」だ。ディーダラス号のシーサーペントなど、UMA関係の本には決まって載ってる有名目撃談が多数紹介されている。「深海」とあるがカナダの「オゴポゴ」についてもかなり詳しく記述されている。

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 Gino d'Achilleによる素晴らしいイラスト。大迫力。他に「雪男」や「マンモス」など五つの作品が掲載されている。

「4 ネス湖の怪物」
 聖コランバ(コロンバ)伝から始まって、1974年頃までの主な目撃例や調査の概要。これもまたUMA関係の本ではよく目にするものばかりだ。この章の目玉は1934年1月の『イラストレーテッド=ロンドン=ニュース』("THE ILLUSTRATED LONDON NEWS")の挿絵が大きく掲載されているところ。これは十数人分の「ネッシー」の目撃談を真面目にイラスト化したもので、小さいコマに背景や湖面の状態までしっかりと描かれていて見応えがある。

「5 恐竜は生き残ったか」
 白人の博物学者や探検家がアフリカの奥地で見聞きした「恐竜らしい怪物」について。これまた目撃報告と伝聞ばかりだけれど、どれも詳細な内容でかなりリアルだ。「シーラカンスが活きてるなら、もしかして恐竜も……」という論調。引用されている恐竜の絵がいちいち旧復元でかっこいい。

「6 ヒマラヤの雪男」
 例によって登山家のエリック・シプトンが発見した足跡の話から始まって、1970年頃の目撃例まで。「足跡と、ときどき見かけるという言葉が、唯一の証拠であり、科学的理論を形成するほどのものではない」(p.115)としている。ブータン政府が発行した「イエティ」の記念切手が載っていて、物欲を刺激される。

「7 北アメリカの怪物たち」
 雪男に続いては「ビッグフット」。そして「ミネソタのアイスマン」、未だに続く定番の構成である。パターソンフィルムと、動物学者のアイヴァン・サンダーソンによるアイスマンの図が大きく取り上げられている。

「8 怪物映画」
 まとめの章。ユニバーサルのモンスターと『キングコング』(1933)など映画に登場する古めの怪物を紹介。そして「怪物とか伝説の動物についての私たちの興味は、未知の大きな力に直面して感じる巨大なものについての恐れ、不屈の勇気に対する驚嘆の気持ちと関係があるのかも知れない。〔中略〕怪物はなお、私たちとともに生きている。今日では、怪物ははるかかなたの宇宙から、あるいは実験室から現れるのである」(p.141-142)とまとめている。

 いたって真面目な本なので、センセーショナルなUMA本を期待すると少し物足りなく感じるかも知れない。それでも由緒正しい怪物の絵が沢山載っているから、見てるだけでも楽しめると思う。印刷も綺麗だし。
 この「超常世界への挑戦シリーズ」の本は、相当古いわりに結構手に入りやすく、千円前後で売ってることもあるので、興味がある人は見かけたらぜひ手にとってみてほしい。


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Posted byserpent sea

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serpent sea  
Re: No title

>>ウォーリックさん
コメントありがとうございます! 星座は「お嫁さんにするなら最高! 」の蟹座です。

興味の対象が似てるのは嬉しいですね。なにせ周囲には全く同好の知人がいないですから。
子供の頃はみんな興味あったはずなのに、気付いたら自分一人になってたという……

UMA関係の本はコンビニで見かけて、最近また買うようになりした。
この夏も3冊ほど。どーせまた同じ感じだろうなと思いつつも、ついつい買ってしまいます。

しかし『ムー』をきっちり読んでるというのは相当濃いですよ。
もしもブログなどを始められるぜひ教えてくださいね。

2013/08/23 (Fri) 21:53 | EDIT | REPLY |   
ウォーリック  
No title

UMAにも興味がおありですか、とよくよく考えればHNがserpent sea
さんですもんね。何か興味の対象がかぶっていてとても嬉しいですw
ただし私はここまで深く研究色の濃い考察はできません。

「ムー」はもの凄く昔からきっちり読んでいまして、未知の生物に
萌え萌えでした。最近は大王イカといい、イエティといいあながち
UMAでもなくなってきましたね。

ご紹介の本は装丁といい、挿絵のレトロ感といい手元に欲しい
感じでいっぱいです。

ところでserpent seaさんは何座ですかw

2013/08/23 (Fri) 10:10 | EDIT | REPLY |   

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