平山夢明『「超」怖い話 Δ(デルタ)』

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 平山夢明編著, 加藤一編集共著『「超」怖い話 Δ(デルタ)』竹書房 2004 竹書房文庫

 この「超」怖い話シリーズは2006年にTVドラマ化されている。連続ドラマ成分を多量に追加されたTVドラマは、後半に行くに従い「実話怪談」の再現よりも、それを収集して歩く人の業や狂気に焦点を当てていて、原作とはかなり趣を異にしている。とはいえ連続TVドラマ史上屈指の恐怖(グロ)描写や、主人公を演じる菅田俊の狂いっぷり等々、非常に見応えのある作品だったと思う。

 本書にはTVドラマ化に際し原作として採用された作品数本を含む、全42話が収録されている。興味深い話ばかりがずらっと並んでるけれど、特に印象に残ったのは以下の6編。

「二組」幽霊を見たとはしゃいでいた男が翌日、自動車事故を起こした。死亡事故だった。以来彼はどんどん憔悴していく。二組の霊に憑かれているという。無惨な姿の幽霊も怖ろしいが、過失とはいえ加害者になってしまった彼の、誠実な対応がまったく報われないのが切ない。そしてもしも自分がそんな事故を起こしてしまったら……なんて考えるだけで怖ろしい。

「蟻沼」多くの実話怪談のなかでも、これほど意味不明で奇怪な話は珍しいと思う。この世とは別のことわりによって営まれる世界をかいま見たかのような、不思議な話である。舞台は戦時中の東北の村、そこに疎開していた当時小学生だった体験者が、蟻の行列を辿って山に分け入り、蟻の大群や奇怪な姿の男の子と遭遇する。
 TVドラマの第一話はこの話を原作とした「アリヌマ」。ピチピチ音を立てながら蠢く蟻の群れがおぞましかった。

「生熊」民話のような不思議な話。山で遭難しかけた女性二人が「生熊」に導かれて無事生還するまでの経緯を描く。乳白色の霧のなかにぼんやりと浮かび上がる鳥居、見え隠れする「生熊」の異形など、雰囲気の良い作品。「生熊」に遭遇して思わず「どうも」と挨拶してしまう二人がおもしろい。

「石呑み」こいつ知ってる奴じゃね? ってくらい、生き生きとバカな小学生が、調子に乗って禁忌とされる塚に悪戯をする。もちろんキツい罰が当たるんだけど、そのときのリアクションが悲惨で、なぜかかわいらしい。

「タロじ」ベランダの間仕切りに書かれた「タロじ」の文字。いくら消しても気付けばまた書かれている。この文字が現れるようになってから体験者は、身体のいたるところに生じる異変に悩まされることになる。文字の意味が分かったとき、思わず感心して、試しに書いてみた。
 ……嫌な気分と丸めたメモ用紙が残る嫌な短編。ドラマでもその嫌な感じが上手く、グロく表現されていた。

「通告義務なし」タイトルから推測できる通り、賃貸物件にまつわる怪談。だだし出てくる幽霊の姿は生半可じゃない。『ゆうやみ特攻隊』の花岡隊長によると、自殺者は死後もその行為を繰り返し続けるらしいけど、これはないわー。怖過ぎる痛過ぎる。
 今住んでるマンション、うち以外のドアの前にずらっと盛り塩がしてあって、それだけでもなんかいやーな気分になるのに、こんなの出たら頭が変になる。当該物件の少なくとも上下左右の部屋には通告義務が欲しい。


 
「超」怖い話 TV完全版 DVD-BOX』竹書房 2006


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Posted byserpent sea

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