江戸川乱歩『青銅の魔人』

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 江戸川乱歩『青銅の魔人』(『江戸川乱歩推理文庫〈32〉妖怪博士/青銅の魔人』講談社 1987 所収)

 前に感想を書いた『鉄塔の怪人』に続いて、またも二十面相がいかがわしいことをやらかしてます。
『鉄塔の怪人』では誘拐した子供にむりやりカブトムシの着ぐるみを着せて調教してたけど、本作では青銅の甲冑の装着を強要。幼い女の子にまで。

 銀座の時計店が襲撃され、懐中時計を奪われるという事件が発生した。犯人は青銅できた銅像かロボットのような姿の「青銅の魔人」。拳銃の弾丸を跳ね返し、目撃者や警察官の追跡から易々と逃れて、跡形もなく姿をくらませてしまう。やがて魔人は珍しい時計や由緒のある有名な時計まで強奪するようになった。次に狙われるのは「皇帝の夜光の時計」。その持ち主からの依頼を受けて、明智探偵と小林少年が事件解決に乗り出した。

 先日に続いて動く銅像が出てくる話。これも相当昔にポプラ社版で読んだことのある作品で、またしても内容はよく覚えてなかったけれど、結構面白かったような印象がぼんやりとあった。さすがに現在の目で見ると、動機やトリックに「?」となってしまうところもなくはないが、懐かしさを差し引いてもかなりおもしろく、好きな作品だ。冒頭の銀座の雰囲気や魔人の人間離れした描写など、見所が多い。このシリーズの売りだと勝手に思っている「追跡」シーンもとても充実している。とくに前半の警官&店員による追跡と、昌一君の暗い木立のなかの単独での追跡には、魔人の薄気味の悪さと追跡する側の頼りなさが相まって、今でも充分な緊張感を感じることができた。

 そしてなにより「地下の美術館」という舞台設定がたまらない。地下に美術館や博物館を作って、そこでこっそりと作品を鑑賞するなんて、想像しただけでもわくわくする。すごい独り占め感だ。これに類した設定が出てくる作品は、ちょっと思い出すだけでも橘外男の『青白き裸女群像』や島田荘司の『暗闇坂の人喰いの木』(←この作品には煙突のトリックも出てくる)など超名作揃いで、どれも大好きな作品である。もしかしたらこうした設定が好きになったのは、この『青銅の魔人』がきっかけかもしれない。すっかり忘れてたけど。

 本書には『少年ケニヤ』の山川惣治による怖い雰囲気の挿絵も収録されていて、これがまたいい味出している。

『江戸川乱歩推理文庫〈32〉妖怪博士/青銅の魔人』
 講談社 1987
 著者:江戸川乱歩
 解題:中島河太郎
 巻末エッセイ・乱歩と私:斎藤栄(作家)「乱歩と私」

 収録作品
 『妖怪博士
 『青銅の魔人

 ISBN-13:978-4-0619-5232-4
 ISBN-10:4-0619-5232-3


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Posted byserpent sea

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