伊藤潤二『うずまき 第2話 うずまきマニア:その2』

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 伊藤潤二『うずまき 第2話 うずまきマニア:その2』(『うずまき』小学館 2000 ビッグ コミックス ワイド 所収)

 秀一の父親が荼毘に付された火葬場の前で、主人公の桐絵たちが空を見上げて驚愕する「その1」のラストシーンから「その2」は始まる。ただし「うずまきマニア」だったおっさん(秀一の父親)は前話で死んでるから、この第2話でメインをつとめるのは夫の異常な死にざまに接し、火葬場の上空に渦巻いた煙にトドメを刺されて、精神を煩った秀一の母親だ。

 ストーリーは母親の「うずまき恐怖症」がどんどんエスカレートして行くさまと、それをどうにかしようとする秀一や桐絵、医師らのドタバタっぷりがカートゥーンみたいなノリで描かれている。舞台となるのは母親が入院する「黒渦病院」。もちろんドタバタとはいっても、そこに挿入されるイメージはもれなく奇怪でグロテスクだ。自傷行為もあるし、虫嫌いの人にはきついシーンもある。

 この「うずまきマニア」では、主人公の周囲の人間関係と、世界観がゆるーく説明されるほか、「その2」の冒頭の煙のようなスペクタクルな奇観から、耳のなかの虫のような極小な怪異までを描写する、スケール的に振り幅の大きい物語であることが示されている。また身体の変工や変形、強迫観念、虫、サイレンや灯台、トンボ池などなど、今後ひとつずつ描かれて行く大小様々な事象が、予告のようにあちこちに散りばめられている。

 ところで著者によると、もともとの構想では秀一の母親を死なせるつもりは無かったのだそうだ。秀一とともに長野あたりに静養に行かせて、まとめて物語からフェードアウトさせる予定だったとか。担当編集者の「全然弱い!」というひと言で、今の形に落ち着いたらしい。好き嫌いはさて置き、もし秀一がいなくなってたら、あのロマンチックな(?)最終回もなかったわけで、これは編集者ナイス判断。


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Posted byserpent sea

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