『小野不由美「ゴーストハント」読本』

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「ゴーストハント」編集委員会編『小野不由美「ゴーストハント」読本』メディアファクトリー 2013 幽BOOKS

 公式のサイトを見たところ小野不由美はノータッチらしかったから、買おうかどうか迷ってたんだけど、リライト版に則った装丁に釣られて買ってきました。

 内容は雑誌『ダ・ヴィンチ』の特集の再編集版で、帯に「ホラー、ミステリー、オカルト、少女性……そして作家小野不由美について」とあるように、「ゴーストハント」とその周辺についての評論集になっている。小野不由美の他の著作に対する言及も多く、どちらかというと「小野不由美読本」って感じ。
 構成は結構ラフで、各記事のテーマもそれぞれの執筆者にお任せだったのか、内容に所々重複がある。それぞれの記事自体が決してつまらないわけではないが、編集方針がズレてるっていうか、違和感を感じながらの読書になってしまうのがもったいない。例えば一人称で書かれた小説の映像化の難しさについて書かれた記事があるけれど、それならアニメの関係者に取材してくれればいいのに、なんて思ってしまう。

 個別記事についてはあまり触れないつもりだったけど、女性三人による対談記事はかなり面白かった。各々の「ゴーストハント」とのファーストコンタクトや、読書好きの女の子の間で「ゴーストハント」が当時どんな風な位置づけだったのか、などが和気藹々と語られている。この対談記事からは作品に対する愛着がよく伝わってくるし、対談の内容も最も作品に寄り添ってるように感じられた。池澤春菜の「自分が関わっていないとふられてしまったような気がして、見るのが辛くなる」(p.11)など、声優さんならではの観点が面白い。それから池澤、辻村両氏がスクールカーストのなかで、揃って自らを浮いた存在だった的な発言をしているのが興味深かった。三つ子の魂じゃないけれど、行間にそこはかとないスノッブな雰囲気が漂っていて、当時もこんなだったんだろうなーって感じでニヨニヨしてしまった。

 それと井辻朱美の「少女と怪異と「一人称」」という記事の、「SPRのゴージャスな測定機器は、麻衣の「一人称」を補完し(麻衣の主観を事象と切り離し)「三人称」へ展開するための装置である」という指摘には目からウロコ。考えてみれば各霊能者たちも、単にキャラの立ったナイス登場人物ってだけではなく、麻衣の欠点(というか足りない部分)をカバーすべく巧みに配置されている。

 そんなわけで個別の記事には読み応えがあるものの、漫画やアニメにはほぼ触れられておらず、いわゆる「ファンブック」的な本ではないから、そういうのを期待しているとがっかりすると思う。雑誌の再編集ってことで仕方ないところが多々あるのかもしれないが、せっかく単行本として出すのだから、もう少しオフィシャルらしい頑張りを見せて欲しかった。


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Posted byserpent sea

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