古賀新一『ばけもの屋敷』

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 古賀新一『ばけもの屋敷』ひばり書房 1984 ヒット・コミックス 139 オカルト・シリーズ

 怪奇漫画の殿堂、ひばり書房の一冊。表題作の『ばけもの屋敷』と『死人屋敷』の2編が収録されている。

『ばけもの屋敷』
 自らの起こした自動車事故で恋人を亡くした主人公の兄は、ちょっと異常なくらい凹んでいる。そのうえ彼はフラッシュバックする幼いころの記憶にも悩まされているという。薄暗くだだっ広い日本家屋を逃げ回り、気味の悪い「三本指の女」に座敷牢に閉じこめられるという断片的な記憶である。恋人の墓参りに訪れた兄弟は、そこで異様な様子の老婆と、赤ん坊を背負った亡き恋人そっくりの女と遭遇する。
 ある夜、兄の部屋からの叫び声に駆けつけてみると、そこには暖炉の火で自ら顔面の半分を焼いた兄の姿があった。翌朝包帯を巻いて外出する兄の後をつけると、あの墓地で恋人そっくりの女と密会をしている。女は醜いものにしか魅力を感じないと言い、背中の赤ん坊もその顔の醜さに魅かれて背負っているのだという。おもむろにねんねこ半纏を開いたその下には、蛇や昆虫がびっしりと這い回っていた。その後兄は劇薬を顔面に浴び、怪物のような面相になって女の許へと向かう……。

『ばけもの屋敷』は主人公の兄の、忌まわしい素性と忘れられた家族にまつわるサスペンスで、多少入り組んだストーリーが展開される。比較的整合性のとれた筋運びで、行き当たりばったり感も少ない。印象としては楳図かずおの『赤んぼう少女(のろいの館)』+横溝正史ワールド、そこに著者独特のグロテスクな趣味を盛り込んだ感じ。同様に「顔貌の美醜」を扱った楳図かずおの作品群と比較すると、人の内面を容赦なく掘り下げるような迫力には欠けるが、おもしろい(著者好みの)絵作りに専心するシンプルなスタイルは好ましい。蛇や昆虫を衣服の下に這わせるなど、著者らしい悪趣味さである(褒めてます)。惜しむらくは老婆の作画で、登場するたびに指の本数が変わってしまっている。ストーリー上重要な点だけに、痛恨のミスだ。
 上記のあらすじがおよそ全編の半分くらいで、以降は女のとんでもない正体と、兄の生い立ちが絡み合い、結末に向けて加速する。

『死人屋敷』
 めちゃ可愛い女の子「加奈ちゃん」が、それとは知らずに火葬場の夫婦の養女となる。彼女を暖かく迎え入れた夫婦だったが、彼らには秘密があった。行き場のないいくつもの死体をこっそりと天井裏に隠し、自分たちの子供のように接してきたのである。「加奈ちゃん」がやってきた途端、これまで徐々に腐敗するばかりだった死体に異変が生じた。お払い箱になると知った死体たちが、にわかに動き始めたのである。

『ばけもの屋敷』がサスペンスの枠に納まるように、超常現象を極力排して描かれているのに対して、本作はゾンビものである。それもアットホームなゾンビ。シンプルなストーリーだが、気味の悪さとほっこり感を交互に醸し出す、著者独特のゆるいノリは健在。死体が動き始めるきっかけが、死者を冒涜したから云々じゃなくて、以前のように可愛がって欲しいからというのがなんとも不憫だ。扱われているのは死体だけれど、これは古典的な人形怪談の筋立てである。
 著者の描く少女は毎回ほんとに魅力的で、本作の主人公「加奈ちゃん」もその例に漏れず実にかわいらしい。

 ひばり書房から刊行された著者の作品のなかでは、比較的大人しく地味な印象の本書だが、収録された両作品とも安定感があって読みやすいと思う。


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Posted byserpent sea

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