伊藤潤二『うずまき 第1話 うずまきマニア:その1』

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 伊藤潤二『うずまき 第1話 うずまきマニア:その1』(『うずまき』小学館 2000 ビッグ コミックス ワイド 所収)

 制服姿の女の子が高台から町を見下ろしている。足もとの影の長さから夕暮れなのが分かる。遠くに黒い灯台が見える。なにやら不穏な雰囲気の渦を巻いた雲が見える。眼下にはごく普通の町並みが、海とすぐそばに迫った崖の狭間に押し込められている。どこがってわけじゃないけれど、見てると不安になりそうな、これからはじまる異様な物語を暗示するかのような、秀逸な1コマ目である。おそらく雑誌掲載時にはカラーページだったのだろう。リアルタイムで読んでた人が羨ましい。このコマ見ただけで「こりゃ良さそうだ」って思ってしまった。

 映画(2000年)やゲーム(WS!)にもなったし、著者にとって初めての青年誌連載作品ってことで、『富江』と双璧を成すほど有名な作品だと思う。内容は地方都市「黒渦町」に「うずまき」にまつわる様々な怪奇現象が発生するというもの。ヒロインの五島桐絵(かわいい)を中心に、どんどんエスカレートしていく状況が、各1~2話の読み切り形式で描かれている。

 この第1話ではサブタイの通り、強烈なうずまきマニアになってしまったおっさん(桐絵の彼氏、斎藤秀一の父親)が、段階を踏んでうずまき死にいたるまでが描かれている。本気か冗談か分からないようなセリフ回しや、繊細な作画は相変わらず健在。おっさんのとんでもない死にざまをはじめ、いくつかの気味の悪い描写も挿入されているが、全ておっさん関連。部屋一杯にうずまき関連グッズを溜め込んで、悦に入ってる姿が面白い。映画でもこのうずまき部屋は大変よく再現されていて、CMでも用いられていたから、強く印象に残っている。

 で、ちょっと思ったんだけど、「うずまき」って確かに不思議な表象ではあるけれど、怖いかどうかっていうと、そうでもない。綺麗で機能的で、見慣れた形だからむしろ親しみやすささえ感じる。カタツムリ、バネ、ナルト、螺旋階段、ネジ……。それでホラー漫画を連載するって発想自体どうかと思うけど(褒めてます)、うずまきをテーマと決めたら、全力で描き切るところがこの著者の凄いところ。出し惜しみをしない。仄めかして終わったりもしない。この辺は先日感想を書いた、H・P・ラブクラフトの作風と通じるものがあるように思う。あとグロに寛容でエロに厳しいところとかも。

 まだまだ序章って感じで、今後の展開を見越した人間関係の説明などが入るため、いつもの短編作品と比べるとやや前置きが長く感じられるが、生理的な嫌悪感を煽る人体の変形、損壊と、コントのような不条理なおもしろさは本作でも冴えている。この時点では、今後の展開が全く分からない。「うずまきマニア:その2」へ続く。


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Posted byserpent sea

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