つのだじろう『霊劇画 真夜中のラヴ・レター〈3〉』

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 つのだじろう『霊劇画 真夜中のラヴ・レター〈3〉』主婦と生活社 1983 SJコミック

それは現実にあるのだ!! その実例をいま日本で体験、紹介できるのはわたしだけであろう!(p.6)


 拳を握りしめた著者が、ポルターガイストの存在を力説するところからはじまる第3巻。収録された「第10章」~「第14章」全5話のうち「第10章 ポルターガイスト」が全ページ数のほぼ1/3を占める。

 - 各話の霊障と雑感 -

「第10章 ポルターガイスト」リアルTV番組(テレビ朝日「女のひろば」)を巻き込んでの心霊ドキュメンタリー。相談者の女性には武士の霊を筆頭にたくさんの因縁霊が取り憑いているらしく、ポルターガイストをはじめ体表に文字が浮き出る、首を絞められるなどの激しい霊障を受けている。著者は出まくり語りまくりで、紙面からはその気合いがビンビン伝わってくる。
 ところがドキュメンタリータッチに徹しすぎたためか、はたまた相談者に肩入れしすぎたからか、いつにも増して作品の結構が崩れてしまっている。家具が飛び回り、電話が粉々になるほどの強烈なポルターガイストが、著者の眼前ではぴたりと鳴りを潜めてしまうのも痛い。そのため相談者の証言に沿って一通り描かれてはいるものの、著者が直接目にした除霊シーンなどと比べると、その迫真性に顕著な差があるように感じられた。

「第11章 よくある霊体験」三人の女性相談者の「よくある霊体験」が紹介されている。

 「その1 沖縄に見る霊」沖縄戦の犠牲者の霊に少女が憑かれる話。
 「その2 友人の亡き老婆が…!!」友人宅に泊まった相談者のもとに、友人の祖母の霊が現れる。
 「その3 死者がとり憑く」近所の葬儀屋の遺体を安置するプレハブに灯りが点いている日に限って、怪奇現象が発生する。

 力作の直後に来るやや力の抜けた作品で、アシスタントの筆も目立つ。しかし当時の小学生にとっては『霊劇画 真夜中のラヴ・レター』全話のなかでも、最恐の一話だった。特に「その1 沖縄に見る霊」はやばい。防空頭巾をかぶった女の霊が出るシーンはトラウマものの名シーンだ。とにかく顔が怖いし、出方も怖い。

「第12章 モンゴリズムの怪」モンゴリズム(蒙古症)とは、いわゆるダウン症候群の旧称で、現在ではその原因も解明されている。
 相談者は蒙古症と診断された赤ん坊を持つ母親。自殺しようとしたところを霊能者に救われ、いきなり「その赤ちゃんは/とっくの昔に死んでるわねっ!!」(p.141)と指摘される。ほぼ同時に産まれて死亡した嬰児の魂が、誤って入ってしまっているというのだ。その後、幽体離脱した霊能者が、賽の河原から本来の赤ん坊の霊を連れ帰り、魂を入れ換えるという荒技で「医師に見放された」赤ん坊を完治させるというのがおおよその筋立て。この赤ん坊に関しては「じっさいには蒙古症ではなく…霊障だった」(p.165)、ダウン症候群ではなく医師の誤診だったらしいという注釈がつくが、なにかと問題がありそうな一編である。

「第13章 霊たちの通り道」比較的ポピュラーなわりに、つのだ漫画での取り扱いが少ない「霊道」に関する話。人気アイドル歌手が落ちぶれた末に自殺未遂を繰り返し、霊能者のもとへ。自宅が「霊道」の上に位置しているため、霊感の強い彼女が霊障を受けることになったらしい。「霊道」の概念を簡単に解説する短編。

「第14章 恐怖の海外旅行」ヨーロッパ旅行の帰路、突然発病した相談者は帰国後すぐに手術を受けるが、今度はまったく異常が見られなかったはずの別の部位に病巣が見つかる。霊能者は除霊が必要と判断、病気の原因は三百年前に殺害された修道尼の霊に憑衣されたことによるもので、除霊によって相談者は完治する。なぜ修道尼の霊が唐突に改心し成仏するにいたったか、などにはまったく触れられない。ページ数の都合もあったかと思うけど、やはりもの足りなさを感じる。

 この第3巻の特徴は、実証可能な現象として「心霊治療」がクローズアップされいてること、霊能者七条絵夢の能力にインフレ化の兆しが見えることなどである。
 気合いの入った著者の言葉で始まった本書は、以下の言葉で締めくくられている。

信じられない方もあるかもしれませんが、これは最近行われた除霊にもとづく正真正銘の実話なのです(p.236)



 ※フキダシからの引用は、読みやすいように改行を調整しています。


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Posted byserpent sea

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