いけ『ねこむすめ道草日記〈9〉』

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serpent sea
 

 いけ『ねこむすめ道草日記〈9〉』徳間書店 2013 リュウコミックス

 毎回同じようなことを書いてる気もするが、先月出たばかりのこの第9巻の表紙も、赤色が印象的な秋っぽいイラストで、やっぱり綺麗。渋垣八幡の鳥居の前に、遠足にでも来たみたいな雰囲気のキャラが並んでいる。前に裏表紙のバーコードで、せっかくのイラストが潰れるのがもったいないって感じのことを書いたけど、この巻ではバーコードのスペースで潰れそうな女郎蜘蛛が、きっちり切り抜かれていてちょっと嬉しい。
 この第9巻はこれまで一番だった第6巻を上回るほどの面白さで、とても楽しく読むことができた。別に伏線が回収されたりするわけじゃないんだけど、今までに別々のエピソードに登場したキャラの関係が一斉にハッキリする。

 本書には「第48話」から「第53話」までの6話と、各1ページのおまけが5編収録されている。サブキャラをメインにしたエピソードが多いのが特徴で、例えば「第48話 狸がラジオ体操で道草」のメインはなんと「狸」。初期のころからちょこちょこ登場していて、便利に使われたり、使えなかったりするあの「化け狸」が主人公である。なんかものすごくかわいく化けてるうえに、ストーリーも子供と妖怪のちょっと切ない触れ合いを描いた好編だったりする。タヌキなのに。
「第51話 小さい頃からコックリさんと道草」はこのタヌキの話の変奏曲で、双子のような印象のエピソードだった。メインのキャラもキツネとタヌキで対になっている。この話は第3巻「第17話」の前日談になっていて、千夏の成長をずっと見守るコックリさんの寂しさや嬉しさがじっくりと描かれている。オマケの漫画もよかった。

 今回サブキャラに押されて出番が少なめの黒菜だけど、「第49話 二口女と食べに出かけて道草」では「二口女」くっちーの愛車FIAT500に乗って、妖怪の友達とドライブに出かけている。このくっちーのFIAT500、いい感じにデフォルメされていて、旧チンクエチェントの雰囲気。車も上手い。「第50話 みんなで星を見て道草」では、今度は人間の子供たちとワイワイやっていて(遊んでばっかりだ)、偶然か計算かは分からないけど、前述のキツネとタヌキと同様、構成に工夫が感じられる。

「第52話 師走の巫女と道草」と「第53話 年末のオフ会で妖怪と道草」では、師走の渋垣八幡を主な舞台に妖怪と人間の交流が描かれている。狛犬姉弟(と黒菜)を溺愛する渋垣八幡の宮司の娘「生方叶」が登場、その親友として「妖ラジオ」のリスナー、「ミサキニトキメク星」こと「星野明美」も再登場している。これまでになかった狛犬姉弟の普段の生活が描かれているのが嬉しい。二人がきっちり正座して並んで食事をとってる様子のかわいいこと。宮司が妖怪とは常に距離をとっているのに対して、娘の叶は二人をどろどろに甘やかしまくっている。先にこのエピソードを読んでいれば、前巻「第46話」「第47話」の印象も変わったかもしれない。またもう一人新たに登場する叶たちの先輩(※)は、この作品には珍しいクセのあるキャラ。叶や千夏とは正反対の霊感を持ってる(持ってない)って設定なのかな。
「第53話 年末のオフ会で妖怪と道草」は「妖ラジオ」のリスナーがオフ会を催す話。メインの妖怪はまさかの「のんびり七人ミサキ」。……会えねーよ。妖怪と遭遇することのリスクがほとんど描かれない本作にしては、異例なほどの不吉な描写がある。危うく「道草」では済まなくなるところだった。

 この巻の収録分で50話を越えたことについて著者は、100話を目指したいと「あとがき」に書いている。それから100種類の妖怪を出したいとも。新キャラが増えても、それまでのキャラをしっかりと描くのが本作の美点、きっとそれぞれのキャラクターに思い入れがあるのだろう。ずっと読んでいく気満々なので、これまで通りのペースでがんばって欲しいと思う。


 ※ この先輩、第1巻の最初から出てました。全く気付いてなかったのですが、コメント欄で教えていただきました。ありがとうございました。


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serpent sea
Posted byserpent sea

Comments 2

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serpent sea  
Re: タイトルなし

ほんとですね! 全然気付かなかったです。まさか同一人物とは。コメントありがとうございました!

2013/06/03 (Mon) 18:17 | EDIT | REPLY |   
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叶の先輩は1話から出てますよ

2013/06/03 (Mon) 00:31 | EDIT | REPLY |   

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