小原愼司『地球戦争〈1〉』

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 小原愼司『地球戦争〈1〉』小学館 2013 ビッグ スピリッツ コミックス スペシャル

 なんかわくわくする表紙のイラストに魅かれて買ってきました。『二十面相の娘』は読んでなかったのだけど(アニメはしっかり見た)著者はレトロなモチーフを好んで使う人なのかな。

 舞台は1851年、産業革命によって絶頂期を迎えたヴィクトリア朝のイギリス。ロンドンのハイドパークにはクリスタル・パレスが築かれ、第1回万国博覧会が開催されている。ホームズや森薫の『エマ』よりも40年ほど昔の時代設定だ。そこにトライポッドっぽい巨大メカがドカンと現れて、ロンドンを蹂躙しはじめる。
 主人公は孤児院で暮らす少年オリバーと、大混乱のなか出会った上流階級の少女アリス。彼らには世界の状況なんて全然分からないし、大人たちが口にする情報の真偽も定かではない。ただ二人(ともう一人の子供)連れ立って、戦火のなかを逃げ延びていく。『宇宙戦争』+ボーイ・ミーツ・ガール+αって感じ。

 当時はまだ航空機が発明される前だから、巨大な兵器に対しては地上戦力に頼るしかないって状況。それでもどうにか敵を撃破しようとする騎兵連隊(の生き残り)の活躍は、なかなか頼もしい。『宇宙戦争』に沿っているなら、トライポッドは世界中に出現してるはずで、日本では幕末のころである。サムライvsトライポッド……。
 まだまだ序盤でこれからの展開はわからないけど、劇中の人物がオリバーに言った「経験を次へ次へと継いでいけ」という言葉は重要っぽい。
 そしてこの作品の最大の見所はなんといっても見開きの絵。アリスをはじめ女の子キャラも可愛いけれど、エドゥアール・リウーの挿絵を彷彿とさせる、見開きいっぱいに描かれた絵は必見。正直これだけでも結構満足してしまうほどのかっこよさである。

 唯一残念だったのは、最初の数ページが滲んだように黒くて見辛かったところ。雑誌掲載時にはカラーだったのだろうけど、せっかくだからカラーのまま収録して欲しかった。
 巻末の対談は、90年代の漫画雑誌と漫画家にまつわる話。漫画雑誌を読んでないので、残念なことにA誌とかJ誌と書かれても全然ピンと来ないんだけど、当時をよく知ってる人にとっては、楽しかったり懐かしかったりするのかもしれない。

 全体を通して「空想科学漫画」って雰囲気満点で、そういうの好きな人にはすごくおすすめの作品。表紙に魅かれて買ってみて大成功だった。宇宙人もしっかり出てくるよ。


  H・G・ウェルズ『宇宙戦争』東京創元社 2005 創元SF文庫


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Posted byserpent sea

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