九州河童の会『九州河童紀行』

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 九州河童の会編『九州河童紀行』葦書房 1993

 河童のメッカ、九州地方の民話を集めた本なのかな、と手にとってみたら、なにやら画像がたくさん載ってる様子。「探訪! 河童の手」なんて記事まである!

 九州には「河童共和国」「菱刈ガラッパ王国」「川内河童共和国」など、いくつもの河童愛好家の団体があって、本書はそれらに所属する団員、関係者の有志によって編集されたものである。「九州河童の会」というのは出版にあたって便宜的につけられた名称のようだ。
 内容は総論からはじまって、河童に関する様々な視点からの記事が、九州各県ごとにまとめられている。記事のテーマは、各地の民話や伝説、信仰、河童像、河童祭り、河童で地域おこし、文学、芸術、大陸との関わり、など執筆者が自分の得意分野や、好きなネタを選んで自由に執筆しているらしく、非常に多岐にわたっている。河童の像や1993年当時の各地の地域おこしの状況などは、いかにもまとめて言及されることの少なそうな記事で、興味深く読むことができた。あとは近年の目撃報告のレポートなども欲しかったところだけど、全体にとても充実した本だと思う。

 本書購入のきっかけとなった「探訪! 河童の手」では、九州各地に現存する六つの河童の手のミイラについて、それぞれの由来や逸話と、ミイラの画像が掲載されている。様々な本で取り上げられることの多い「河童の手」だが、こんな感じで同じ地域のものを集めて、所蔵者に取材を行い、詳細な由来まで紹介するような記事は意外と珍しいのではないだろうか。参考までに本書に掲載されたものをあげておく。

・河童の手・その一 福岡県「荒戸山清龍院」所蔵。肘から先のミイラと骨片。
          箱書きには「河童の手 清龍院宝物」とある。毎年7月17日に一般公開されている。
・河童の手・その二 個人蔵。有名な短い毛で覆われた手首。指のあいだに水かき状の皮膜がある。
・河童の手・その三 福岡県、個人蔵。長い爪が特徴的な手首のミイラ。
・河童の手・その四 鹿児島県、個人蔵。子供の手のような小さな手首。指紋まで残っている。
          箱書きには「川童右手の一つ」云々とあるらしい。
・河童の手・その五 熊本県、個人蔵。鷲形の爪がついた小さな手と足のミイラが1本づつ。
          長いあいだ膏薬として用いられてきたという。
・河童の手・その六 福岡県「北野天満宮」所蔵。その三とよく似た雰囲気の手首のミイラ。
          箱書きには「河伯之手」とある。

 またこれとは別に、酒造メーカーの家屋の梁の上から発見されたことで広く知られている、あのクリーチャーっぽい河童の全身のミイラの記事「伊万里・水神河伯ミイラ由来記」がある。ミイラを所蔵する「松浦一酒造株式会社」の経営者による手記だ。一般にも公開されてるらしいから、機会があればぜひ直接見てみたい。

 ミイラ関連以外では、河童の起源や正体に関する記事が多かった。各執筆者が持論を展開したり、諸説の考察をしている。最近見たディスカバリーチャンネルの『怪物魚を追え!』では、河童の正体はオオサンショウウオらしい、なんて言ってたけど、河童には異名も多く、推測される正体や起源も様々である。
 現代において河童のイメージに最も近いのは、単純に水死した子供の霊なんじゃないかと思うけど、もちろんあの形態の未確認生物がいるなら最高。

 本書には「紀行」のタイトルの通り、河童にまつわるポイントの記された九州各県の地図も掲載されていて、本文の記事を読んで興味を魅かれたらそこを訪れてみる、なんてガイドブック的な使い方もできるようになっている。

 河童の全身のミイラを所蔵する「松浦一酒造株式会社」のサイト↓河童のミイラのコンテンツもあります。
 http://www.matsuuraichi.com/



『九州河童紀行』
 葦書房 1993
 編者:九州河童の会

 収録作品
 『民俗の中の河童伝説』天本孝志
 『河童とは何者?』後藤光秀
 『河童ブームとその背景』田辺達也
 『福岡・博多の河童たち』後藤光秀
 『福岡市の河童伝説』後藤光秀
 『太宰府の河童』後藤光秀
 『宇美の民話』天本孝志
 『糸島・カッパの刀』小金丸輝
 『久留米・河童まん荼羅』橋本嗣史
 『浮羽地方のカッパ』矢野信保
 『田主丸・荒五郎大明神と河童』藤田正登
 『三井・中学生が掘り起こした河童の民話』後藤光秀
 『日本でただ一つの「河童」駅舎と駅名』後藤光秀
 「数多い河童の類似伝説」(後藤)
 「九州河童文献少史」(矢野)
 『伊万里・水神河伯ミイラ由来記』田尻徳麿
 『北波多・徳須恵川水系の河童伝説』北波多村役場
 『長崎の河童伝説』最所清
 『対馬の河童』天本孝志
 「河童を愛した作家たち」火野葦平資料室 鶴島正男
 『九州河童王国万歳!!』吉田武
 『河童渡来は中国人児童の集団疎開』吉嶋華仙
 『彦一に利用された河童の噺』吉嶋華仙
 『河童九千坊が伝えたもの』串山弘助
 『残党河童こぼれ話』波止杏一
 「探訪! 河童の手」(後藤・田辺)
 『豊後・大分の河童』天本孝志
 『上浦・カッパの伝説と地蔵踊りの由来』松浦輝博
 『耶馬溪・雲八幡宮の「あ・うん河童」』後藤光秀
 「世界初! 河童の結婚式」佐賀市長 西村正俊/菱刈町長 久保敬
 『私の河童研究から』橋口純彌
 『川内川のガラッパのルーツ』大坪悟郎
 『宮崎県の河童』道北昭介
 「九州河童アーティスト」(後藤)
 「九州の河童王国の紹介と閣僚名簿」

 ISBN-13:978-4-7512-0487-0
 ISBN-10:4-7512-0487-4


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