諸星大二郎『栞と紙魚子の百物語』

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 諸星大二郎『栞と紙魚子の百物語』朝日新聞社出版局 2008 眠れぬ夜の奇妙な話コミックス

 シリーズ屈指の萌えキャラにして、肌色担当の弁天様登場。
 脱ぎっぷりのよさとか、著者独特のタッチで描かれた肉体のえもいわれぬエロさとか、実は相当天然なところとか、ぐっとくるポイントを数えあげればキリがないけれど、やはりその神様らしさと俗っぽさが渾然一体となった「口調」が、弁天様のたまらない魅力になってると思う。
 本書にはそんな弁天様が出てくる「弁財天怒る!」「天気雨」を含めた全7話が収録されている。もちろん弁天様関連以外の話もおもしろい。

「栞と紙魚子物怪録」は平太郎を驚かせる側の立場から見た「稲生物怪録」だ。主人公の栞と紙魚子は、ごく自然に振舞っているだけなのに、ほとんどもののけ扱いされている。
 この怪異の側からの視点は、例えば「百物語」の中で召還される団先生の奥さんや、「モモタローの逆襲」で栞を見て「俺には俺の立場があるんだよ/飼い猫としての」(p.116)と隠れるボリスのように繰り返し描かれていて、シリーズの怪異に対するスタンスをよく表していると思う。

 全体の印象としては、ここに来て導入された新キャラが揃って陽性であるということもあって、これまで多かれ少なかれ描かれていた、殺人や人体実験や呪いといった不吉な要素や、不安や切なさを醸し出す幻想的な雰囲気は影をひそめ、あっけらかんとしたコメディ色がより強くなっている。少し残念なのはこれまでのレギュラー陣の活躍が少ないことくらいで、M・R・ジェイムズの作品を彷彿とさせる作中作や、ロジャー・コーマン(AIP・ARC)の小ネタなどから、著者の興味の対象が窺い知れるのも楽しい。

 ※フキダシからの引用は、読みやすいように改行を調整しています。
 ※関連記事です↓杉本好伸編『稲生物怪録絵巻集成』
 http://serpentsea.blog.fc2.com/blog-entry-104.html


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