Archive2012年10月 1/1

諸星大二郎『栞と紙魚子の生首事件』

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  諸星大二郎『栞と紙魚子の生首事件』朝日新聞社出版局 2007 眠れぬ夜の奇妙な話コミックス「栞と紙魚子」シリーズの記念すべき第1巻。続巻と比べるとかなり血生臭く、舞台となる「胃の頭町」がまだ異界化する途上にある感じで、街全体が怪異に見舞われるようなスペクタルな展開はないから、まさに「事件」って言葉がぴったり。収録されている10話のうち、劇中で刑事事件が発生する表題作の「生首事件」「殺人者の蔵書印」では...

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平山夢明『怖い本〈1〉』

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  平山夢明『怖い本〈1〉』角川春樹事務所 2000 ハルキ・ホラー文庫 本書には幽霊譚をはじめ、妖怪らしきものが出てくる話や、異界を垣間見た話、なんとも分類し難い奇妙な話など、全50話が収録されている。一話毎の完成度は高く、凄惨な描写が地雷のようにあちこちに埋められているから、うっかり気を抜いて読めない。そんななかでも特に印象に残ったのは、以下の5編。「一話 ボールをつく子」サッカーやバスケットボールの要...

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MODEL Art (モデルアート) 2012年 12月号 No.858

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  MODEL Art (モデルアート) 2012年 12月号 No.858 今年も早いものでもう12月号、特集は「スケールモデラーのための色彩学」、こういうHOW TO系の特集はジャンルが絞られない分、作例がバラエティに富んでいて楽しい。でも大当たりってあまりないよなーと思いつつ、おなじみのテキストっぽい表紙を開いてみたら、今回は大当たりだった。いきなり「トヨタ2000GT」。どんな脈絡のチョイスか分からないけど大好きな車だ。その次が...

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福来友吉『心霊の現象』(古本の観賞)

 福來友吉『心靈の現象』弘學館出版 1916 映画『リング』(1998)の登場人物「伊熊平八郎」(演 伴大介)のモデルとおぼしき人物、文学博士「福来友吉」の著書。先月、近所のおもちゃ屋と古本屋がミックスした感じの店で発見、相当痛んでいるけど500円だったので買ってみた。 本書は例の千里眼事件(詳しくはwiki等参照)で、著者が東京帝国大学を退職した翌年に出版されている。 箱と本。両方ともかなり痛んでいる。特に箱はバラバ...

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押切蓮介『椿鬼〈1〉』

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  押切蓮介『椿鬼〈1〉』ぶんか社 2010 ぶんか社コミックス 物語の舞台は山中か山里に限定されていて、時代設定もはっきりしない。村田銃が使用されていることから明治以降であることが推測されるが、この作品にとって厳密な時代設定がそれほど意味をなすとも思えない。ミニスカのマタギ少女が人知れずお山を守り、幼子がケモノを孕み、洞窟には人を喰ってる奴らがいる。荒唐無稽だけど、それでもそんなことが起こってそうな、...

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木村心一『これはゾンビですか?〈1〉はい、魔装少女です』

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  木村心一『これはゾンビですか?〈1〉はい、魔装少女です』富士見書房 2009 富士見ファンタジア文庫 めでたく11巻も発売されたことだし、この機会に1巻から感想文を書いてみようと思う。「えっ! アニメ化すんの? 遅すぎる! 」というでかい文字が目に付くピンクの帯にピンクの表紙、タイトルが見当たらないけど、「1 はい、魔装少女です」←これがタイトルか?? というのが第一印象だった第1巻。 ためしに買って読んでみたら、こ...

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泉鏡花『龍潭譚』

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 泉鏡花『竜潭譚』(泉鏡花『鏡花短篇集』川村二郎編 岩波書店 1987 岩波文庫 所収) 1896年(明治29年)に発表された神隠し小説。文語体で書かれているからぱっと見た感じ取っ付きにくいけど、ルビにも助けられて意外にすらすら読めた。道端の主人公の千里(男の子です)の目線を追っているうちに「行く方も躑躅(つつじ)なり。来し方も躑躅なり」(p.8)という一面あかね色の、怖ろしいほど綺麗な風景のなかにすっと連れていかれてしま...

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手塚治虫『ドン・ドラキュラ〈1〉』

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  手塚治虫『手塚治虫漫画全集 MT248 ドン・ドラキュラ〈1〉』講談社 1982 カバーの紹介文にある「怪喜漫画」という表現がぴったりな、一話読み切り式のコメディ。屋敷の移築に伴ってトランシルヴァニアから東京に移り住んだドラキュラ伯爵と、その愛娘チョコラの日常と騒動を描く。現代(1979年当時)の東京で、古典的な吸血鬼のスタイルをどこまでも貫き通そうとする主人公の悪戦苦闘ぶりがおもしろ切ない。 この作品は大ヒッ...

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SCALE AVIATION (スケールアヴィエーション) 2012年 11月号 Vol.88

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  SCALE AVIATION (スケールアヴィエーション) 2012年 11月号 Vol.88 待ちに待ってたフォークランド航空戦特集「The 1982 Falklands Conflict」。表紙はタミヤの1/48『BAe シーハリヤー FRS.1』で、懸念していた「NOSE ART QUEEN」も今月号はしっかり表紙に載ってる。 特集は74日間の戦闘を機体で辿る構成。「分かりやすいフォークランド紛争まとめ」としても興味深く読める。作例もとても充実していて、好きな機体がいくつも...

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いけ『ねこむすめ道草日記〈3〉』

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  いけ『ねこむすめ道草日記〈3〉』徳間書店 2010 リュウコミックス この巻に限ったことではないけれど、この作品の老人の描写には少々もの足りなさを感じていた。なんとなく無機的で、この役柄の老人に求められるほっこり感というか、人柄からにじみ出るような滋味が感じられなかったからだ。反対に子供や黒菜をはじめ幼い傾向の妖怪たちは、小さいコマのふとした仕草までいきいきと描かれていて愛らしい。どこかで小説家が書...

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ジョン・ラバック『自然美と其驚異』

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 ジョン・ラバック(John Lubbock)著, 板倉勝忠訳『自然美と其驚異』("The Beauties of Nature and the Wonders of the World We Live In")岩波書店 1933 岩波文庫 最近録り溜めていた深夜アニメを見終わると、AXNミステリーを見てることが多い。「ヨーロッパを中心に、世界の上質なミステリードラマをお届けする海外ドラマチャンネル」という謳い文句の通り、各国のドラマを見ることができる。なかでも多いのが英国製のドラマで...

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常光徹『学校の怪談 百円のビデオ』

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  常光徹『学校の怪談 百円のビデオ』講談社 2009 講談社文庫 本書は講談社KK文庫『学校の怪談』~『学校の怪談8』を加筆、再構成したもので、『学校の怪談 K峠のうわさ』の続巻にあたる。「百物語の世界」50話、「学校の七不思議」7話の、全57話を収録。これで『学校の怪談 K峠のうわさ』の50話と合わせて「百物語の世界」が完成する。 概観については前巻と同じなんだけど、本書の特徴としていくつか気付くところがあった。...

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楳図かずお『闇のアルバム』

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 楳図かずお『シリーズ〈こわい本〉〈4〉闇のアルバム』朝日ソノラマ 1983 サンコミックス 懐かしのサンコミックス、「楳図かずお シリーズ こわい本」より。 著者の鬼才ぶりが遺憾なく発揮された一冊。扉も含めてきっちり8ページの短編が24話収録されている。そのうち「その20 隣の人」を除く23話は、1ページ1コマ、つまり1話について8コマでオチがつくというすごい構成。男女関係のサスペンスを基調としながらも、それに拘泥...

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つのだじろう『霊劇画 真夜中のラヴ・レター〈4〉』

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 つのだじろう『霊劇画 真夜中のラヴ・レター〈4〉』主婦と生活社 1983 SJコミック 迷走の気配を見せた第3巻に続いて、期待と不安がうなぎのぼりの第4巻。まあ著者のことだから例え迷走したとしてもきっと面白いだろうけど、ネックは霊能者七条絵夢の能力のインフレか。なんて思ってたら、さすが非凡なバランス感覚の持ち主、新たな霊能者(それもぐっと庶民的な)をさらっと登場させることによって、見事に霊能力のインフレ化を阻...

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福島正実『マタンゴ』とW・H・ホジスン『夜の声』

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  福島正実『マタンゴ』(東雅夫編『怪獣文学大全』河出書房新社 1998 河出文庫 所収 ) W・H・ホジスン(William Hope Hodgson)著, 井辻朱美訳『夜の声』("The Voice in the Night"『夜の声』東京創元社 1985 創元推理文庫 所収) W・H・ホジスンの『夜の声』は、船員が海上で遭遇した遭難者らしいボートの男から、身の上話を聞くという構成の短編。暗い夜の海のいつまでも晴れない霧や、姿を見せないボートの男の得体の知れなさ...

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