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山口直樹『【決定版】妖怪ミイラ完全FILE』

 

 山口直樹編著『【決定版】妖怪ミイラ完全FILE』学研パブリッシング 2010 ムーSPECIAL

 去年感想を書いたコンビニ本『【決定版】最強のUMA図鑑』(←前の記事へのリンクです)と同じ「ムーSPECIAL」の一冊。表紙には「オールカラー 写真総数約300点!! 闇の精神史を徹底追跡!」とある。一般の書籍なら帯に書かれるような煽り文句だが、「精神史」というところがポイント。巻頭には「妖怪ミイラがテレビ番組などで紹介される場合、「本物か作り物か」ばかりが問題にされるが、筆者はその真偽をさほど気にはしていない。妖怪と、その存在を信じてきた人間との間に横たわる精神世界の有り様こそが重要で興味深いからだ」とあり、本書はその方針に基づいて編集されている。他の編著者による雑誌『ムー』関連の同様の出版物のにおいては、その辺はかなり曖昧な表現がなされていたところで、本書のこうした踏み込んだ方針は非常に価値があると思う。

 また上記の煽り文を見ると、うっかり妖怪が300種載ってるのかと勘違いしてしまいそうになるが、300点なのは写真の数で、本文の記事の数は全7章で34編、コラムなどで取りあげられた小さな写真も含めて、収録されている「怪異」の数は70体強。初出一覧によると1991年から2009年にかけて、雑誌『ムー』に発表された記事の再録と、いくつかの「書き下し」で構成されているようだ。巻頭には以下の各章で紹介されるミイラや遺物のマップ「日本の妖怪ミイラMAP」が、各章の終わりには「〜図譜」という写真中心の簡単な記事と、「ミイラ」についてのコラムが収録されている。以下本文の各章を紹介↓

「第1章 鬼」
 大分県宇佐市の「十宝山大乗院」所蔵の「鬼の巨大ミイラ」、大分県本耶馬渓町の「羅漢寺」にかつて保管されていた「鬼の子供のミイラ」、「鬼の歯と角」「鬼の手形石」など全国各地に伝わる五つの鬼のミイラや遺物が紹介されている。「羅漢寺」の「鬼の子供のミイラ」は昭和18年の火災で焼失しており、現在では絵葉書の写真が残されている。
「鬼の図譜」各地に残された鬼の遺物や写真を紹介。
「コラム1 世界最古のミイラ」

「第2章 人魚」
 日本各地に伝わる6体の「人魚のミイラ」をはじめ、イギリス、カナダに伝わる人魚のミイラなど、9体の人魚のミイラと遺物が紹介されている。和歌山県橋本市「学文路苅萱堂(西光寺)」所蔵の、顔を覆うような仕草をした非常に有名なミイラは、県有形民俗文化財に指定されている。また鹿児島県奄美市の原野農芸博物館所蔵のミイラは、X線撮影など科学的な分析が行われていて、それについてもしっかり記されている。
「人魚の図譜」日本各地、海外に伝わる人魚の遺物や写真を紹介。
「コラム2 世界一有名な人魚のミイラ」

「第3章 妖獣」
 この章では「件」「牛鬼」「雷獣」などの獣チックな外見を持つ伝説の怪物を「妖獣」として、そのミイラや遺物を紹介している。全6体。特に詳細な記事が掲載されている「件」の剥製は、『新耳袋』(←前の記事へのリンクです)の著者、木原浩勝の個人蔵。もともと見世物小屋で公開されていたものだという。そのレントゲン写真も掲載されている。
「怪物の図譜」かつて大分県にあった「怪物館」という見世物小屋が発行した、「件」「鵼」などのミイラの絵葉書を紹介。
「コラム3 日本の即身仏信仰」

「第4章 烏天狗」
 和歌山県御坊市の「歴史民族資料館」所蔵の「烏天狗のミイラ」、青森県八戸市の「八戸市博物館」の「烏天狗と双頭人魚」など、五つのミイラと遺物が紹介されている。近年科学調査がなされた「八戸市博物館」の「烏天狗と双頭人魚」は、細部の写真の他、X線写真が掲載されている。このミイラは博物館内に普通に展示されているようで、近所の人が羨ましい。
「コラム4 氷河から甦ったミイラ」

「第5章 河童」
 有名な佐賀県伊万里市の「松浦一酒造」が所蔵する「河童のミイラ」と、見世物小屋で公開されていたという「河童のミイラ」について。ともに貴重な全身のミイラで、詳細な写真が掲載されている。
「河童の図譜」「河童の手」10種と遺物を紹介。上記のような全身ミイラは少ないが、「河童の手」は各地に多く残されている。
「コラム5「眠れる美少女」の永久死体」

「第6章 龍・大蛇」
 これもまた有名な大阪府大阪市の「瑞龍寺」の「龍の全身ミイラ」、千葉県印旛沼の「教安寺」が所蔵する「真蛇骨、通称『印旛沼の主』」の遺物(頭蓋骨)などを紹介。
「龍の図譜」「双頭の龍」「竜の尾」など5点の写真が掲載されている。
「コラム6「奇跡」を体現した聖人たち」

「第7章 妖異」
 これまでの章とは少し趣向を変えて「文字が浮き出たアワビの殻」や「幽霊の足跡」といった、怪異の痕跡の類いを中心に紹介している。このアワビの殻は『新耳袋』のもう一人の著者、中山市郎の実家に伝わるものだという。これについては『新耳袋 第二夜』にも詳しく記されている。

 以上のように内容は非常に充実している。こうした妖怪のミイラや遺物を扱った本の中でも、屈指の一冊だと思う。唯一残念なのは、痛みやすくばらけやすいコンビニ本特有の造本。もう少し大きめの判型で、ちょびっと紙質も良くして出してくれたら、間違いなく買い直すと思う。もちろんおすすめの本です。


 ※河童の手と全身ミイラについての関連記事です↓九州河童の会編『九州河童紀行』
 http://serpentsea.blog.fc2.com/blog-entry-108.html


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山口直樹『幻のツチノコを捕獲せよ!!』

 山口直樹著, 並木伸一郎監修『幻のツチノコを捕獲せよ!!』学習研究社 1989 MU SUPER MYSTERY BOOKS

 空前のツチノコブームから十数年後の1988年、奈良県で開催された賞金付きのツチノコイベントをきっかけに、再びツチノコブームが起きた。当時の記事を改めて見返してみると、マスコミや地方自治体によって形成されたブームだったことがよく分かる。それが第二次ツチノコブームの特徴だったといえるかもしれない。本書はそんなブームが早々と下火になりはじめた1989年の7月ごろに刊行されている。
「ツチノコ目撃を報ずる新聞記者もテレビ局のレポーターも、姿形程度しかツチノコを知らないのだ。/これでは、せっかくツチノコが再び活発に活動をしはじめても、ツチノコを捕獲し、その存在を実証することなどできはしない。〔中略〕そこで、ツチノコの正しい知識をまとめてみようと、今回筆を取った次第なのである」(p.4-5)。こうしたコンセプトに貫かれた本書は、現地調査と聞き取り、全国の生息地を県単位で網羅して、「MU SUPER MYSTERY BOOKS」のなかでも屈指の好著となった。内容は以下のように五つの章で構成されている。

「第1章 ツチノコ3大出没地域と最新目撃事件を追う」
 奈良県下北山村、岐阜県白川村、広島県上下町における目撃情報とツチノコ探索イベントの状況を、地図や写真、目撃者のスケッチを用いて詳細にレポートしている。「ツチノコ探索イベント」とは、いうまでもなく自治体主催の村おこしイベントで、こんなに大勢が大騒ぎしながら押し掛けてるところに、ツチノコに限らず何らかの動物がのこのこ出てくるとは思えない。とはいえこうしたイベントが催されると、それを報じた新聞や広報の読者からの目撃情報が増えるのだそうだ。これらの地域ではツチノコにそれぞれ100万円以上の懸賞金を懸けている。

「第2章 数多くの目撃情報からツチノコの特徴を検証」
 古くは記紀の「ノヅチ」から矢口高雄の『バチヘビ』までといった、ツチノコに関する様々な文献から、その特徴や習性をピックアップして実際の目撃情報と照合している。地味ながらおもしろい試みだ。ただそれぞれの文献によって、ツチノコのイメージにばらつきがありすぎて、ひとつのイメージに統合するのは難しそう。この章ではほかに、全国各地に伝わるツチノコの異名についても言及されている。

「第3章 謎のベールに包まれたツチノコの正体を暴く」
 前章で導き出したツチノコ像を、世界中のめぼしい現生生物と比較し、その正体に迫る。著者はツチノコを何らかの生物の誤認とする説には否定的で、新種の蛇か未知の化石種の生き残りである可能性が高いという。そしてツチノコの絶滅を食い止めるには、「一日も早く捕獲し、その生態を調べ、適切な保護政策を行うしかない」(p.148)としている。

「第4章 ツチノコはここにいる・県別探索地徹底ガイド」
 本書の目玉企画がこの章。「ツチノコ捕獲候補地マップ」や写真、スケッチ、目撃情報を用いて北海道を除く各都府県ごとの棲息地域を詳細に解説している。まずは自分の住んでる地域をチェック、馴染みのある地名が出てくるとちょっと嬉しい。他の都府県についても、地名だけでは全然ピンと来なくても、こうして地図になっていると分かりやすいしおもしろい。中部、近畿地方に目撃情報が集中しているようだ。

「第5章 めざせ100万円、究極の捕獲方法はこれだ!!」
 ツチノコイベントの紹介→文献のチェック→正体について類推→棲息域の確認ときて、実際に捕まえに行ってみよう!というのがこの最終章の趣旨。服装や装備から山歩きの注意事項にまで言及されていて、昆虫採集とかバート・ウォッチングとか、あの辺の本の雰囲気といえば分かりやすいと思う。「クマに出会ったとき」なんて項目もある。巻末には雑誌『ムー』の懸賞金についての要項と、「ツチノコ目撃報告書」、ツチノコの「関係団体連絡先一覧」が付いている。

 本書は第一次ツチノコブームのマスト、山本素石の『逃げろツチノコ』を念頭に書かれているようだ。タイトルからも分かるように、ツチノコを絶滅から救うという題目に対して、「一日も早く捕獲すべき」という本書と「逃げろツチノコ」では、真逆の方向を示唆しているのだけれど、内容については『逃げろツチノコ』に負う所が大きく、「参考文献」としても一番最初に記載されている。『逃げろツチノコ』からエッセイの要素を省き、ツチノコの捕獲に特化させたのが本書といった感じ。マスコミや地方自治体が主導し「懸賞金」が前面に押し出された、第二次ツチノコブームの空気をよく伝えている。


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